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2013-11-20 14:27
(連載)オバマ大統領ではアメリカは分裂する(1)
河村 洋
外交評論家
オバマ政権は財政支出強制停止や政府閉鎖といった政治的な行き詰まりにあまりにも頻繁に直面している。アメリカ国民の間での党派の分断はブッシュ政権期に顕著になり、バラク・オバマ氏が大統領に就任してからさらにそうした傾向が強まっていった。ティー・パーティー運動はオバマ政権に対する反動として現れた。度重なる財政支出強制停止や政府閉鎖に関しては、専門家の間ではイデオロギー的な分裂や財政政策の議論に終始しがちだが、私はバラク・オバマ氏の非アメリカ的な側面に対する一般国民の嫌悪感を中心に述べたい。
オバマ氏以上に敵意むき出しの罵詈雑言を浴びせられた大統領はいない。そうした誹謗中傷には社会主義者、共産主義者、イスラム教徒などといったものがある。オバマ氏が本当はアメリカ生まれではないと信ずる者も依然として多いが、そうなると憲法の規定から大統領の資格を喪失してしまう。そうした中傷には人種差別的な感情もあるだろうが、やはりオバマ氏の非アメリカ性に対する嫌悪感の方がはるかに根深い。大統領就任時、プラハおよびカイロでの演説に見られるように、オバマ氏の外交および内政政策の見解があまりにも謝罪姿勢なので、アメリカの伝統的価値観とは相容れない。
大統領就任より、あるいはオバマ氏の第一期の選挙の最中から、政権に就けばアメリカ国民の分裂が深まるであろうことは予期されていた。しかし、メディアは史上初の黒人大統領の登場だとしてオバマ氏を称賛し、ドラマチックに扱った。そして反ブッシュ気運に迎合して、オバマ政権の誕生がもたらす政治的な意味合いに考慮を払わなかった。ティー・パーティーに見られるような保守派大衆の反撃は当然の帰結なのである。大衆の抵抗に関しては、2つの重要な点を挙げたい。第一に、彼らは憲法の理念に基づくアメリカを守ろうとしており、それは政府からの自由である。第二に、彼らは崇高な理念の憲法を頂く祖国に危険をもたらすいかなるアクターにも立ち上がり、中でもイスラム教徒のテロリストは最も重大な脅威と見なされている。大衆の間でのオバマ氏への中傷に彼らの感情がよく表れている。政治が常にある政策をめぐる理性的な討論というわけではないので、上記の2点を、主としてフェイスブックとツイッターにあふれるメッセージから述べたい。
ティー・パーティーが小さな政府を掲げているために財政規律を求める運動だと理解されがちである。こうした見方は皮相的である。運動への参加者のほとんどは専門家ではなく、グラスルーツの一般国民である。彼らの主要アジェンダは予算や福祉の技術的な問題よりも、憲法の理念に基づくアメリカである。オバマ・ケアは彼が掲げる大きな政府を攻撃するためのシンボルである。ブルッキングス研究所のティモシー・ガストン上席フェローのように、共和党はオバマ・ケアよりも財政政策を中心に議論すべきだと提言する向きもある。両党が単に経済に関して論争しているのなら、それでも良い。しかし、それはティー・パーティー保守派には当てはまらない。1994年の北西部太平洋岸の森林保護でのマダラフクロウや現在の地球温暖化でのホッキョクグマのように、オバマ・ケアは現政権の大きな政府のシンボルとなっている。(つづく)
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