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2014-11-02 02:20
(連載1)ウクライナ選挙とロシアの対応
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
ウクライナで2月26日に最高会議(国会)の選挙が行われ、大統領の「ポロシェンコ・ブロック」、ヤチェニュク首相の「国民戦線」など親欧米派が勝利し、過半数の議席を獲得した。同時に、親露派が強い東部のドネツク、ルガンスク両地域では、選挙を実施できなかった地域が多く、またロシア併合が宣言されたクリミアでも選挙は実施されなかった。選挙後のウクライナ情勢およびロシアや欧米がそれにどう対応するかについて考えたい。
ウクライナ問題に軍事介入も含めてロシアが強く介入しているのは周知の事実だ。じつはプーチン大統領の目的は極めて明確なのであるが、その目的達成の手段やプロセスが恐らくプーチン自身にもまだ明確に見えていないので、今後のウクライナ情勢が混沌としているのである。またこの混沌の背景には、NATO諸国がウクライナに何処まで関与すべきか、それがNATO諸国自身にも不明確、ということも関係している。簡単に説明しよう。
まず、ロシアの目標は明確だということについて。その最重要の目標とは、ウクライナをNATOに加盟させないこと、つまりウクライナにNATOの基地やミサイルを置かせないことだ。ロシアが最も恐れているのは、ウクライナがNATOの一員となり、米軍などの軍港、基地、ミサイル防衛システムなどがウクライナに配置されること、そしてセバストポリ軍港などをロシアが自由に使えなくなることである。これを阻止することがロシアの至上命題だ。この目的のために、プーチンはウクライナ東部のクリミア化(ロシア併合)や独立ではなく、ウクライナの「連邦制」を主張した。連邦制というと一見穏かに思えるが、実際にはロシアの影響力の強いウクライナ東部・南部、いわゆるノボロシアを「トロイの馬」として利用しながら、ウクライナ全体をロシアの勢力圏に置くことだ。プーチンは「ユーラシア経済共同体」、さらに将来的には旧ソ連を再統合する「ユーラシア同盟」創設の野望を持っているが、この野望にとっても、ウクライナを欠いたら意味がなくなる。
目的がこれだけ明確でありながら、なぜその達成法やプロセスがプーチンにも見出せないのか。それは、ひとつには、ドネツクやルガンスクの「独立」にどう対応すべきか、おそらく結論が出ていないからだろう。11月2日には、ドネツク、ルガンスクで首長や議会の選挙が行われようとしている。この選挙が実施された場合、両地域が「独立」を宣言する可能性が高まる。プーチンとしては、ドンバス、ルガンスクをグルジアの南オセチア、アブハジアのように「独立」させて、事実上ロシアの保護区にすることも、ロシアに併合することも、目的にはしていない。もしそうなった場合、ウクライナの他の地域を欧米の側に突き放す可能性、つまりNATOやEUに押しやる可能性が高まるからだ。したがって、ロシアが軍事介入までして支援してきたドネツク、ルガンスクの今後の扱いが、ロシアにとっても微妙になっているのである。(つづく)
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(連載1)ウクライナ選挙とロシアの対応
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袴田 茂樹 2014-11-03 00:39
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