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2014-11-11 16:28
日中首脳会談は「4項目の合意文書」の後付けか?
山田 禎介
国際問題ジャーナリスト
北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)歓迎夕食会で、各国首脳の着用した中国服のワインカラー、ブルーの差は、国家元首級と政府代表の差。安倍首相の中国服が濃いブルーだったことは、それで納得はできる。だが、果たして安倍・習近平主席の首脳会談と言えば、わずか25分間。この首脳会談は、まさに先に発表された「4項目の合意文書」の後付けとなる形式会談に終った。ここで習近平主席が安倍首相に述べた「歴史問題は13億人余りの中国人の感情に関わる~」に、まず筆者は注目した。これこそまさに伝統的な常套句。中国人の交渉術の文言の一つだからだ。
この手の文言や行動形式は、米中国交正常化交渉当時のプロセスでも多用されている。安倍首相には「13億」とした中国は、当時の米中交渉の米代表に「あなたは10億の中国人の気持ちを傷つけている」という言葉を使う場面がある。今回、安倍首相の初対面の挨拶に対し、無言で応えた習近平主席の所作も、「賓客は必ず先に語る」中国外交の形式。1971年7月の会談で、周恩来はキッシンジャーに対し”執拗に”先に発言するよう求めた前例が近い。今回の「4項目の合意文書」に代表される「自国に有利な議題設定」という術策も中国は得意、と米国は指摘する。
米国は実際、対中国交正常化交渉でこのような場面に遭遇し、今後の対中交渉の戒めと対抗戦略を編み出す専門家育成のため、報告書をまとめている。米中央情報局(CIA)/ランド研究所の報告書「Chinese Negotiations」 (原本『中国の政治行動様式 1967-1984』)がそれだ。英語の「マンダリン」とは中国官僚制も指す。明朝から清朝、とりわけ清朝宮廷外交はそっくり現代に生きている。外交上格下とみる相手にはそのような礼で接する。一衣帯水、同文同種と信じる向きがまだいるが、中国は欧州から極東まで広がるユーラシア大陸の一部。いわば、太平洋島しょ国の一部である日本とは、気風、意識、生活習慣が全く違う外国であることを認識すべきだろう。筆者の経験で言えば、メンタル面ではフィリピン、インドネシアの方が日本により近い。
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