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2015-12-23 01:32
(連載2)アベノミクスと衆参同日選挙
角田 勝彦
団体役員、元大使
2013年4月黒田新日銀総裁は2%、2年、2倍のボードを手に大規模な金融緩和の実施、いわゆる黒田パズーカを発表した。巨額の国債の購入で実質金利低下と円安、株高は演出されたが、2%の目標達成はほど遠く、景気浮揚の効果も弱かった。黒田総裁は2015年4月に「2年というのは15年度を中心とする期間」と先延ばしし、10月には「2016年度後半頃」とさらに延期した。2015年12月18日、日銀は残存期間の長い国債をより多めに買うなど緩和の補完策を決めたが、副作用が懸念されている。3年間で国債発行残高は705兆円から807兆円に増えている。
所得が上らずに物価が上がるインフレ目標はどうでも良いが、円安で輸入品価格が上昇したのにかかわらず、この結果である。本命の経済成長も実現されていない。GDPは安倍政権発足直前の四半期からの3年間で実質2.3%しか増加していない。年平均では0.76%である(2015年度の実質成長率は1.0%)。円安からドルベースのGDPは減少している。「第一ステージ」の整理がされないうちの「第2ステージ」の発表は目眩ましといいたくなる。10月7日の内閣改造の政権浮揚効果は限定的で内閣支持率にあまり影響しなかったが、「1億総活躍社会実現」への緊急対策に見られるように経済最優先を打ち出した政権運営は、国民の支持を得て、安倍内閣への支持率は安保関連法の国会審議で急落する前の水準に戻った(11月27~29日日経・テレビ東京世論調査で49%)。
衆参同時選挙を目指しているように思えてきた安倍内閣にとって、支持率の回復維持は最重要課題である。12月18日発表の金融緩和強化、消費税軽減税率導入をめぐるどたばた、TPP対策を含む3兆5031億円の補正予算案、史上最大となる2016年度予算、民間企業に積極的な賃上げや設備投資を求める「官民対話」、法人税軽減など、そのための政策が矢継ぎ早に打ち出されている。財政再建の面からは逆行するものもある。年金運用の安全性を害するものもある。補正予算案に盛り込まれた3000億円以上の予算を使い低所得の高齢者らに3万円の給付金を配ることなどは、選挙にらみのバラマキ以外の何者でもなかろう。
他方、国民の関心を安保に向けたくないため、政府は来年3月に施行される安保関連法を巡り「駆けつけ警護」の適用や米軍支援協定改定案提出などを選挙後に先送りする方針とされる。ただし国民の安保関連法反対は依然強く野党中心の反対派も共同戦線を組みつつある。沖縄の諸問題もある。政府ももちろん野党の分断を狙っている。12月19日の安倍総理と橋下徹前大阪市長の会談はその一環であろう。来年夏のおそらく衆参同日選挙は憲法改正への道を開くかも知れない重要な選挙である。アベノミクスの成否はその結果に大きな影響を与えよう。(おわり)
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