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2016-01-06 13:45
(連載1)「ロシアの地方での日露首脳会談」が意味するもの
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
2013年4月に安倍首相とプーチン大統領がモスクワで首脳会談を行った後、国家間儀礼の順番として2014年にも2015年にも、プーチン訪日によるわが国での公式の日露首脳会談が予定された。安倍首相はプーチンを招くことで、平和条約問題の解決に道筋をつけたいと強い意欲を示していた。しかしウクライナ問題での対露制裁など日本を含む欧米とロシアの緊張関係が続く中で、米国はこの時期におけるプーチンの日本への招待に不信感を表明し、ロシア側も意欲を示さず、2015年の訪日も見送られた。プーチン大統領は2015年11月に、「安倍首相とはロシアの一地方で会えれば嬉しい」と述べたと大統領報道官が公表した。
安倍首相は、G7の一員として対露制裁に加わりながら、一方ではプーチンを日本に招いて関係改善を図るというジレンマに直面していた。私はプーチン大統領自身も現在、対日政策に関して安倍首相と同様ジレンマに陥っていると考えている。そしてそのジレンマの結果として、順番からして彼が訪日して行うべき日露首脳会談を「ロシアの地方で行いたい」という提案になったと考える。国際儀礼上はプーチン大統領が訪日すべきなのに、「会いたいなら今度もまたそちらが来なさい」と言うのは、特段の事情がない限り、対等な2国間関係を認めない無礼な対応となる。ロシア側の対応をどう理解すべきか、プーチンの心中を推察してみたい。
プーチンは欧米との関係が緊張する中で、ロシアの孤立を脱するためにも、中国だけでなく日本ともとくに経済関係を中心に関係を発展させたいと考えている。油価の大幅下落などエネルギー国際市場でロシアは苦戦しており、日本のエネルギー市場や日本からの投資は魅力的だ。また資源依存の経済から脱却するためにも、ハイテク産業面での日本との協力は重要だと考えている。今、招待に応じて日本との密接な関係構築に成功すれば、対露批判のG7に楔を打ち込むことにもなる。この意味では、米国などの反対を押し切ってあえてこの時期にプーチンを招こうとする安倍首相の姿勢を、プーチンは好意的に見ていたはずだ。
しかし、プーチンには訪日を躊躇する、あるいは訪日したくない気持ちもある。それは、この時期に日本で日露首脳会談を行う理由として、安倍首相が幾度も「平和条約問題の解決」を強調したからだ。4月の訪米の際も、6月のドイツでのG7サミットの際にも、安倍首相は各国首脳に、日本とロシアの間では平和条約問題が未解決だという特殊事情があるとして、その問題の解決に向けてプーチンを日本に招くのだと力説した。この特殊事情を強調せずただ「対話の重視」とか「関係改善」を述べただけでは、なぜわざわざこの時期に日本が招くのか、という疑問に答えられないからだ。(つづく)
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