当時同盟通信国際局長で後の時事通信社長・長谷川才次は、鈴木が「黙殺」という言葉と同時に、記者団から「宣言を受諾するのか」と聞かれて「ノーコメントだ」とも言ったと述べている。この「黙殺」発言は長谷川らにより「ignore it entirely(全面的に無視)」と翻訳され、送信された。この翻訳は正しかったが、これを見たロイターとAP通信は「reject(拒否)」と短絡して報道してしまった。こうして、増幅気味で、かつ微妙なニュアンスが無視されたまま、方針が伝わり、原爆が投下されるに到ったのだ。しかし、トルーマンが原爆投下を決定した背景は別のところにある、という見方が濃厚だ。投下しなくても日本の降伏は間近であったのにもかかわらず投下したのは、まず原爆開発のマンハッタン計画に当たって使用したアメリカ史上でも最高の19億ドルもの予算を、議会に事後承認させる必用があったことがあげられる。議会に「成果」を見せる必要があったのだ。さらに戦後のソ連の台頭をにらんで核開発の予算を獲得するためにも、実戦上の「効果」が必要だった事もある。もちろんスターリンに原爆保持のけん制をする必要もあった。深層心理には人種的偏見があったとする説もある。