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2016-11-14 10:45
我が国は「自由で公平な社会」を目指すべし
四方 立夫
エコノミスト
トランプ氏が大方の予想に反し米大統領選に勝利したことは、Brexitの時と同様に一般大衆が既存の政治に対し強い怒りを抱いていることを、政府、大手マスコミ、大手世論調査会社などのエスタブリッシュメントが把握していなかったことを物語っている。冷戦が終結し「米国一極体制」となって以降、自由世界は市場経済に基き経済的繁栄を謳歌したものの、その恩恵に与ったのはごく少数で、大多数は恵まれない状態に置かれたままであり、中でもWall Streetにおける”Sub-prime Loan”や”Credit Default Swap”は「豊かな者は益々豊かに、貧しい者は益々貧しく」するものとなった。
オバマ政権でその是正が試みられたものの、大学卒業者すらも多額の奨学金の負債を抱えたまま正規の職を得られないなど、多くの米国民の不満は蓄積されるままとなった。マルクス/レーニン主義によれば資本主義は帝国主義に突入して、停滞し、共産主義に移行する、とのことであったが、戦後の資本主義は「自由」を基盤として発展を続け、国民は豊かになり、その経済力こそがソ連邦の崩壊の引き金となったものであった。
然しながら、本来「自由」と対になっていたはずの「公平」が失われ、先進国の国民の間で貧富の格差が拡大し、まじめに働いている者が貧しくなり、ごく一部の「知恵者」だけが豊かになる世界に変貌してしまった。そのことが「一般大衆の怒り」の原点にある。我が国においても、豪華ホテルが乱立し、贅沢を極めた列車旅行がブームとなる一方、低所得に苦しんでいる多数の国民が取り残されている。そのことは、かつての「一億総中流社会」から欧米流の「格差社会」に変貌しつつあるためではないか、との危惧を覚える。
日本では「突出した天才」はごく僅かであり、ほとんどの国民は「勤勉、実直、誠実」を旨としている人々である。かかる圧倒的多数の国民が著しく「不公平」を感じるようになったとすれば、それは憂慮すべき状態である。アベノミクスにより一部の大企業の業績は回復しつつあるが、中小企業にその効果が行き渡り、多くの国民がデフレ脱却を実感できる日はまだ遠い。既に業績の上向いた企業はその富を広く社会に還元して、経済の底上げを図り、「正直者が報われる、自由で公平な社会」こそ我が国が目指す道である。
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