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2016-11-16 14:31
トランプ次期大統領にどう対応するか
船田 元
衆議院議員(自由民主党)
大方のマスメディアの予想に反してのトランプ氏当選から数日が経ち、世界も日本も正気に戻りつつある。株式市場も為替市場も落ち着いてきた。実はまだ得票数が確定しない州が2、3あり、僅差のために再集計を要求される州もあると聞く。2000年の大統領選挙では、共和党ブッシュ候補と民主党ゴア候補が大接戦を展開し、選挙人獲得で271対267だったことを思い出した。今回はそれに匹敵する接戦だったが、まず結果は覆らないだろう。大統領選挙中は誹謗中傷合戦が繰り返され、我々もうんざりするほどだった。特にトランプ氏の暴言は枚挙に暇がない。ヒスパニック系移民をこれ以上入れないよう、メキシコとの国境に巨大な壁を築き、その費用をメキシコに負担させる。イスラム教信者をアメリカに入国させない。TPPはじめ、自由貿易体制からの離脱も辞さない。さらに日本については、核武装したらどうかとか、在日米軍経費を日本に払わせろ、などである。
しかし当選後のトランプ氏の言動は、今のところ気持ちの悪いくらい、大変穏やかである。オバマ大統領との注目の会談でも、終始和やかに政権移行についての話し合いが行われたという。安倍総理をはじめ主要各国首脳との電話会談にも積極的に応じ、聞く耳を持っていることも証明され、ひと安心といったところか。だが、人間の本性はそう変わるものでもなく、今後もトランプ氏の言動には細心の注意を払う必要がある。選挙中のキャッチフレーズである「偉大なアメリカを取り戻す」の意味は、アメリカの国益を全てに優先するということだ。したがってトランプのアメリカは、内向き志向でモンロー主義の復活を目指すことになる。また「世界の警察」を事実上辞退することをはじめ、国際社会でのプレゼンスを下げることにつながる。これを実行されたら、現在の世界秩序が混沌に陥る危険がある。これを防ぐには、アメリカの関心を世界につなぎとめるよう、国際社会が皆で働きかけなければならない。
日本としても、東アジアに対するアメリカの関心をつなぎとめることが急務だ。この地域の政治的、経済的安定が、アメリカの国益にとって死活的に重要なことを伝えなければならない。在日米軍の駐留もこの文脈で理解すべきだが、特にその経費の半分以上は日本が払っており、米軍駐留国の中で最多の割合であることを、知らしめなければならない。TPPはじめとする自由貿易体制が、アメリカの国益に叶うことも声高に主張すべきである。閣僚人事についても早速始まったようだ。アメリカでは政権交代の度に、ホワイトハウスをはじめ連邦政府のスタッフが、3000人以上も入れ替わる、いわゆるポリティカル・アポインティという慣例がある。ここにトランプカラーをどこまで浸透させるか、あるいは従来の路線にどのくらい引き戻せるかも、注目して行かなければならない。
安倍政権にとってはアメリカとの良好な同盟関係の維持が、全ての前提である。その意味でトランプ政権の発足までに、日本の立場をどの程度ホワイトハウスに伝えられるかが正念場となる。決して遠慮せずに、どんどん主張すべきである。さらにはトランプ氏の側近、ブレーン、あるいは近い人物を味方につける必要がある。
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