2016年秋頃から、フィリピンのミンダナオ島とマレーシアのサバ州の間にあるスールー諸島周辺海域で、身代金目的の海賊リスクが高まっている。この海域では、同年上旬から航行船舶を乗っ取り、乗組員を拉致した上で身代金を要求する、という海上誘拐(Maritime Kidnap)が多発している。当初は漁船やタグボートなど低速で乾舷(満載喫水線から上甲板の舷側までの高さ)が低い船が標的だったが、10月以降、大型外航船舶も標的となっている。最初に被害に遭ったのは、韓国籍の重量物運搬船「DONG BANG GIANT No.2」(11,391総トン)だ。2016年10月20日、フィリピン南部スールー諸島とボルネオ島に挟まれたシブツ海峡を航行中の本船に、高速艇で接近したアブサヤフを名乗る10人の武装集団が乗り込み、韓国人船長とフィリピン人乗組員1人を拉致して逃走した。