26年も前の湾岸戦争の後、村上兵衛氏(1923-2003)が、日本人の平和・戦争観について次のような辛辣な言葉を述べている。巷間、戦後の日本は戦争を放棄したと、と言われる。無論それはウソである。日本人は戦争も平和も、ともに「考えること」自体を放棄して、今日まで来たのである。戦後の日本の「平和思想」あるいは「平和主義」が、いかに軽薄かつ詐欺に充ちたものであったか……(今日の日本人の)近・現代史に対する無知、無関心は驚くべきものである。平和を、戦争との相関において考えようとしない知的な怠惰……。過去の歴史はおろか、現代世界に生起しつつある「戦争と平和」について、その一切に目をつぶって来た。日本人は「駝鳥の平和(砂に頭だけを突っ込んで目を塞ぐ)」を生きて来た。日本人は自分自身をダマす天才である。(『This is 読売』 1991年4月号)