初の米朝会談は金正恩委員長の勝利に終わった。北朝鮮は従来の合意よりも緩やかな“denuclearization of the Korean Peninsula”の約束をしただけで、トランプ大統領より“security guarantees”を得、さらに米韓合同軍事演習の中止、並びに在韓米軍の縮小~撤退に関する発言まで引き出した。「日米韓を中心に世界が結束して北朝鮮によるCVID(Complete, Verifiable, Irreversible Dismantlement)が達成されるまで最大限の圧力を掛け続ける」はずが、肝心の米国が最も融和的な姿勢に転じたことは、トランプ政権が「中間選挙ありき」で安全保障に関する意識が低いことの現れに他ならない。直前に開催されたG7では、トランプ大統領は一旦合意した首脳宣言を、その後のトルドー首相の記者会見に激怒して反故にし、自由貿易を堅持するはずのG7の分断と共に、トランプ政権の同盟国軽視を世界に印象付けることとなった。同時期に開催された上海協力機構が反保護主義を掲げた共同宣言を発表したことと対照的である。