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2019-02-06 11:08
(連載2)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」の謎
緒方 林太郎
元衆議院議員
ここから今日の本題ですが、私が毎月勤労統計以上に懸念しているのが、(統計ではありませんが)内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」です。簡単に言うと、これから10年くらいの経済はこれくらいで成長して、金利はこの程度、インフレ率はこうなるみたいな試算です。元々この試算は政治的にもみくちゃにされる傾向があります。特に成長率を高く見積もりたい経済産業省、成長率が高いと予算増要因なので固く見積もりたい財務省との間で数字を巡って激しいやり取りがあります。これまでも政治的にニュートラルな試算ではありませんでした。
ただ、昨年の試算はそういう次元を超えて異常でした。安倍政権になってから、ベースラインケース(それまでやっていた普通の試算)に加えて、成長実現ケースというものが加えられました。潜在成長率を大幅に上回る3-4%の成長率を設定するシナリオです。潜在成長率を大幅に超える成長率なんて長期間続くはずもないのに、そういう試算を出してきて、どちらかと言うとそちらをプレイアップするやり方が横行してきました。
これだけでも「?」なのに、昨年の試算で長期金利を異常なまでに大幅に下げました。平成29年1月の試算では、2025年時点でGDP成長率3.8%、長期金利4.4%で試算していましたが、平成30年1月の試算ではGDP成長率を3.5%、長期金利3.2%で試算し直しました。成長率見通しは大して下げず、長期金利だけ大幅に下げました。これは何を意味しているかと言うと、国の借金の対GDP比が拡大しないようにしているわけです。理由は簡単で、プライマリーバランス大幅赤字が解消しない中、金利の見通しを大幅に下げないと、国の借金の対GDP比が拡散するシナリオにしかならないからです。プライマリーバランス均衡を放棄する代わりに、国民には粉飾予想を見せて「大丈夫だよ」と宥めているというふうに見えます。たしか、茂木大臣は「モデルを回したらこうなった」と言い訳してましたが、そんなはずはありません。間違いなく神の手が入ってます。この件はずっと気になっており、「何をどうしたら、こんな数字になったのか。」を調べてみようと思っている所です。
その観点で興味深く疑っているのが、今日、経済財政諮問会議に出されるであろう中長期の経済財政試算です。これは統計ではありませんが、毎月勤労統計の大騒ぎを見てどういうものを出してくるのか注目したいと思っています。ちなみに、私はGDPそのものの計算も神の手が入っていると見ています。この数年、「統計改革」の名の下にGDPについても算定手法が変わっており、かなりヤバい事をやっているのではないかと私は疑っており調べています。ただ、これが難しいのは、仮にヤバいものが見つかったと仮定しても、それを公開したら世界経済に大混乱を引き起こすおそれがある事です。夕張市も、ギリシャも、公開情報で出している数字に粉飾、隠蔽があり、それが判明した所から危機になっています。そういう空恐ろしさを最近感じます。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」の謎
緒方 林太郎 2019-02-05 17:37
(連載2)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」の謎
緒方 林太郎 2019-02-06 11:08
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