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2019-03-10 19:07
日本の総合安全保障
四方 立夫
エコノミスト
米朝首脳会談は予想外の結果に終わり、我が国としてはひとまず「ICBMさえ廃棄すれば短中距離核は容認する」ような最悪の合意に達しなかったことには安堵するものの、北朝鮮は引き続き時間稼ぎをしながら短中距離核の実戦配備を推進しており、同じく中国が中距離核を質量共に飛躍的に向上させていることと合わせ、日本の安全保障環境は益々戦後最悪の状態となってきている。
米国は昨年2月の”Nuclear Posture Review”の中で、米国は嘗てない核の脅威に曝されており、新たに低出力核を備えた潜水艦発射型巡行ミサイルなどを開発すると共に、同盟国に対し”additional allied burden sharing of the nuclear deterrence.”を求めている。更に、米国は本年2月にINF条約破棄をロシアに正式に通告し、ロシアもこれに応じた措置を取る中で、既に中距離核に関しては中国が優位に立っていると言われる東アジアに地上発射型中距離核ミサイル配備を検討する可能性もある。我が国は戦後一貫して米国の核の傘の下にあり「非核三原則」を国是としてきたが、周辺環境が劇的に変化する中で「不都合な真実」を直視し、同原則の再検討を含む現実的な対応を講じ、ミサイル防衛システムの向上と共に抑止力の向上を図ることが急務である。
米国は ”China Military Power 2019”の中で、人民解放軍は世界の最先端技術兵器を実戦配備しつつあり、既に一部の分野では世界をリードしている、と警鐘を鳴らしている。又、“Cyber Strategy 2018”に於いて同盟国と協力し、サイバーに於けるインテリジエンス、防衛力、そして攻撃力の強化の重要性を訴えている。ペンス副大統領は昨年10月にハドソン研究所で行った演説の中で中国を強く非難し、更に本年2月のミュンヘン安全保障会議での演説では同盟国に対しフアウエイを始めとする中国IT会社の製品の使用禁止を呼び掛けている。自衛隊はIT統合部隊を創設し人数も1,000人規模に増大するとの計画を打ち出しているが、日米に加えオーストラリア、欧州、等との緊密な連携によるサイバー防衛力並びに抑止能力の向上も同様に喫緊の課題である。
一方、オーストラリアでは、トランンプ大統領の”America First”政策を受け、2018年7月ピーター・ジェニングス豪戦略政策研究所長が“Trump means we need a ‘Plan B’ for Defence”と題する構想を発表し、「米国に依存した安全保障政策を再考」する動きも出ている。3月1日付日経新聞の秋田浩之氏の論説にその詳細が述べられているが、米国内で”New Nationalism”、”Socialism”、の様な新たな運動が起こり米国社会そのものに基本的な変化の兆しも見て取れる中で、我が国としても今後とも日米同盟を基軸としながらも、米国を引き続きアジアに留めておく為にも、我が国自信の防衛力及び抑止力を強化し、我が国が主体となった外交を展開していくことが肝要である。米国が撤退したTPPをTPP11の形で纏め上げ、更にその拡大を図りつつも米国との良好な関係はむしろ強化されていることは将に良き先例であり、引き続き近い将来に米国をTPPに引き戻しTPP加盟国の戦略的パートナーシップを強化すべく最大限尽力すべきである。
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