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2019-06-19 11:43
(連載2)日米首脳会談と北朝鮮問題――北朝鮮の非核化は不可能
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
さて、2003年8月、六者協議が始まる直前に抱いた私の懸念であるが、私は、「この協議で核問題や拉致問題の解決が可能だとの楽観的期待を抱くべきではない、むしろ北朝鮮に乗ぜられる懸念の方が強い」と警告した。その後の事態は残念ながら、私の懸念の通りになった。
その当時、ロシアの専門家は、北朝鮮が六者協議を体制延命のために、あるいは核を脅しにして、不可侵や経済支援の約束を取り付けるために利用するだけではないかと、強い疑いを抱いており、また、北朝鮮がたとえどのような約束をしたとしても、外からの支援が不十分だと考えれば、核の脅しをまた使わないという保証は何もないとも指摘していた。そして当時の米国も、核放棄の代償としての経済援助にも消極的であった。米朝合意(94年合意)の裏切りを経験していたからだ。
そのとき、私は「米国は武力行使の可能性を残しながら、『自らは侵略せず』と約束する可能性はある。考えられる最も馬鹿げた構図は、日本や韓国が中露に歩調を合わせながら、米国に平和的・外交的解決のみを要請し、北朝鮮への不可侵や体制保証の約束を迫ることだ」と分析している。さらに私は「(2003年の米軍を中心とする多国籍軍によるイラク攻撃により、カダフィが核開発放棄を宣言し、金正日が恐怖心から長期間姿を隠したように)最終的には軍事対応への恐怖があって初めて、北朝鮮は核放棄にも応じるのである。平和的な解決を実現し瀬戸際外交のエスカレーションを抑えるためにこそ、日本や各国は米国が最終的には軍事オプションを残している状況を利用しなければならない」とも指摘した。
こうした当時の教訓を踏まえて考えれば、金正恩は、米大統領が何を約束したとしても、核は絶対手放さない、といえる。というのは、フセイン大統領、カダフィ大佐の例だけでなく、1994年のブダペスト覚書の例を彼は熟知しているからだ。ブダペスト覚書は、米、英、露などがウクライナに対して、核兵器放棄と核不拡散条約(NPT)加盟を条件に、独立国家としてのウクライナの主権を保証したものだ。核兵器さえ保有していたならば、フセイン、カダフィ、ウクライナには別の運命があり得たと、また複数の大国による国際保証も全く無意味だと、金正恩は確信しているはずだ。米国大統領の任期は数年にすぎないが、金正恩が念頭に置いているのは、今後数十年あるいはそれ以上の「金王朝」の存続である。(おわり)
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袴田 茂樹 2019-06-18 18:21
(連載2)日米首脳会談と北朝鮮問題――北朝鮮の非核化は不可能
袴田 茂樹 2019-06-19 11:43
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