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2019-07-26 12:26
(連載2)日本の政策形成過程のさらなる民主化に向けて
小野寺 栄
松下政経塾第37期生
ここでいう専門家には、学者や有識者だけでなく、より有権者や国民に近い存在として政策に対して臨場感と現場知を持つ民間人も含まれるべきである。例えば、議員の選挙区の事情をよく知る地域NPOの職員や議員が強く関心を持つ政策に関連する企業で長年経験を積んできたビジネスマンなどが想定される。彼らを介すことで国民が政策決定に関与できるチャネルは格段に広がる。これに加えて、議員立法の発議要件の引き下げも必要だろう。国会法では衆議院20名、参議院10名の賛成がないと議員立法を提出することができないと定められている。さらに衆議院においては、所属する会派による承認が必要となるなど、法案を提出するだけでもハードルが高いことが分かる。
現在、筆者がフェローとして業務に携わっているアメリカ議会では、発起人が一人であっても法案を提出することができる。その分、成立の見込みがないような地元支援者への顔向け的な法案も多く、法案通過率も約2%と低いことも事実であるが、日々議員事務所に寄せられる有権者や市民団体からの声を政策に反映させることで、議員のスタンスや解決策を示すことができる。たとえ法案が通らなかったとしても、会期を跨いで再度提出することも可能であり、法案のリバイスを重ねていく過程で、各議員の支持を取り付け、委員会の審議に持ち込み、法律として成立させることもできる。
したがって、日本でも議員立法に対する門戸を広くし、国民の問題意識や政策ニーズに根差す政策や法案を国会の場で議論する機会を増やすべきなのである。そして最後に、政治過程に国民が参加できる手段を開発したとしても、国民一人ひとりが主権者としての意識を強く持たなければ民主主義は成立しない。主権者として自分たちの意見を社会に届けるには、選挙だけが手段でないことを知り、行動に移すことが何よりも大切だ。日本の投票率の低さ故に、選挙以外の政治参加は国民にとってハードルが高いと思うかもしれない。
しかし、各々が出来る範囲のことをやれば良い。少し足を止めて政治家の演説を聞いてみる、支持する政党や政治家のボランティアを行う、社会起業家として自ら社会課題に向き合う等、それもまた民主主義社会に参画しているということなのである。政治過程の在り方に完璧な絶対解は存在しない。このことを自覚し、民主主義という政治体制に甘んじることなく、その課題や改善点に向き合うことが大切だ。選挙以外にも国民が政治過程に携わることのできる手段を増やし、絶えず民主主義を「アップデート」していくべきである。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)日本の政策形成過程のさらなる民主化に向けて
小野寺 栄 2019-07-25 14:26
(連載2)日本の政策形成過程のさらなる民主化に向けて
小野寺 栄 2019-07-26 12:26
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