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2020-02-10 12:41
(連載2)松本修氏の緊急レポに中国政局の深部を読む
葛飾 西山
元教員・フリーライター
誠に注目に値する重要な指摘である。その中で私は2と3の絡みに着目したい。非常時において、信頼できる側の人間を頼りにして、その人物を通して指示を出して事に当たろうとするのは、組織のトップの常である。今回は習近平総書記の腹心の部下とも懐刀とも言われ、異例の速さで政治局員となった蔡奇がそれに当たるのかもしれない。
だがこうした人事は、時には役職の空文化と混乱、要らぬ主導権争いを引き起こすこともある。今回、前線で事に当たる解放軍のことである。習近平総書記はこの事態をテコとした解放軍関係人士の影響力の拡大は未然に抑えたいと考えているのだろうか。かつて中国は毛沢東時代に「工業は大慶に学べ」というスローガンのもとで人民の奮闘で大慶油田を開発したと謳ったが、実は解放軍を全面投入して開発したものであったことが明らかになっている。その一方で解放軍を仕切っていた林彪の逃亡墜落死事件が発生した。
今回、解放軍を全面投入し、それが成果を挙げた場合、解放軍と党の関係に微妙なアンバランスが発生する。習近平総書記はそこを警戒したのであろうか。ただ、解放軍も使われるだけ使われて黙っているということはないだろう。ウイルスが沈静化した後、それによって解放軍の発言力が高まってくれば、そのガス抜きのために尖閣諸島あたりで示威行動が行われるかもしれない。そうなると日本政府はその対応に迫られることになる。現在のウイルス問題は今後の日本をとりまく政治と無関係とは言えまい。
非常時の対応人事一つにも、政治的な駆け引きが絡むのが政治の常。ウイルス対策の結果の如何では、今後の政局に向けてダークホース的に足場を固めうる人物が現れないとも限らない。今回の中国の対応を分析するに思うのだが、ウイルス沈静化の当面の取り組みの底流で、既に、その先の政局をにらんでの長期的なスパンを見越した静かな闘争が展開され始めていると考えるのは、穿った見方であろうか。(おわり)
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(連載1)松本修氏の緊急レポに中国政局の深部を読む
葛飾 西山 2020-02-09 14:04
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葛飾 西山 2020-02-10 12:41
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