7月13日にはポンペオ長官が声明を発表、南シナ海の島での領有権争いで中国の主権主張に対してハーグの国際仲裁裁判所が違法とする2016年7月16日の判断を「法的拘束力がある」と、米国としてはじめて支持した。米国は二国間の領有権紛争では一方を支持する立場をとらないという伝統的な方針を転換した画期的な声明である。これに先立つ6月17日には、中国外交トップの楊潔篪中国共産党政治局員とのハワイ会談が決裂した。自らの訪中(1972年)で米中国交への道を開いたニクソン元大統領は1967年に外交雑誌論文で「中国が変わるまで世界は安全ではない」、「アメリカの目標は(中国に)変化を引き起こすことである」と書いた。これについてポンペオ氏は「ニクソン大統領が望んできたような変化は起きなかった」と歴代政権の対中関与政策の失敗を断言した。ポンペオ演説に中国について「(怪物の)フランケンシュタインを作った」というニクソン氏の言及がある。これは「ツキディデスの罠」の紹介で知られるハーバード大学のグレアム・アリソン教授の著作(DESTINED FOR WAR, Can America And China Escape Thucydides Trap? 2017. p216)の中でも紹介された。元大統領が晩年、スピーチライターだった盟友で評論家のウイリアム・サファイア氏に「我々はフランケンシュタインを創り出してしまったかもな」と述懐したエピソードを念頭に置いたものだ。