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2020-08-27 15:22
(連載2)中国の体制変革に踏み込んだポンぺオ米国務長官演説
笹島 雅彦
跡見学園女子大学教授
ポンぺオ氏は、中国対抗策として、国連、北大西洋条約機構(NATO)、主要国首脳会議(G7)などの結束を訴える一方、新たな有志連合や民主主義国家同盟の構想にも言及した。それでありながら、多国間協調をないがしろにし、ドイツからの在独米軍の削減や在韓米軍の削減、駐留米軍費用分担の拡大を訴えて、同盟諸国との軋轢を生んできたのだから、全くちぐはぐな印象を与える。ポンぺオ氏ら4人の発信は、2018年、19年秋のペンス副大統領演説からさらに一歩踏み込んだ対中強硬策であり、政権内で統一された外交政策といえるかどうか疑問が残る。こうした演説とは別に、トランプ大統領本人による気まぐれな対中取り引きの嗜好が継続する一方、米大統領選をにらんで、民主党候補のジョー・バイデン前副大統領を対中弱腰と批判する材料として一時利用する価値を見いだしている側面もある。
政権に参画していない共和党主流派の安全保障コミュニティーの見解とも大きく異なる。ブッシュ(子)政権下で国務長官を務めたコリン・パウエル氏や73人の元安全保障関係の高官らが見切りをつけてバイデン候補支持に回っているほどだ(8月20日付・Forbes)。党派対立の溝が深まっている米国政治で、対中政策は、民主・共和両党が強硬論で足並みをそろえている数少ない政策分野である。この4年間で、連邦議会、主要行政機関、情報機関、シンクタンクだけでなく、米国内世論も対中強硬論に傾いている。
バイデン候補は、同じ対中強硬論でも、より戦略的で整合性のある外交に取り組むだろう。中国の産業補助金や不当廉売など不公正な経済政策を批判し、人権、民主主義擁護の側面に重点を置きながら、同盟諸国との協力を重視する方針を示している。一方、地球環境問題や新型コロナウイルス感染対策などでは対立を回避し、中国と協力していくことになろう。
目前の米大統領選では、トランプ、バイデン両候補のどちらが当選するにせよ、日本としては当面、従来通り「自由で開かれたインド太平洋」構想を打ち出していくことが賢明だ。自由民主主義の価値観を共有する米国の同盟国としての外交的立場を鮮明にし、中国に付け入るスキをあたえてはならない。そのうえで、新政権が中国と、「静かな戦略対話を開始」(リチャード・ハース外交問題評議会会長)し、中国の対外行動をより良い方向へ向かわせるよう側面援助する道が開かれている。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)中国の体制変革に踏み込んだポンぺオ米国務長官演説
笹島 雅彦 2020-08-26 11:59
(連載2)中国の体制変革に踏み込んだポンぺオ米国務長官演説
笹島 雅彦 2020-08-27 15:22
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