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2021-03-11 22:39
(連載3)「新X論文」:長期的な対中戦略の必要性
松川 るい
参議院議員
(1)新X論文の提案する「米国がなすべきこと」にはほぼ全て同意する。米国が米国自身の国力を上げることも、同盟国との連携進化拡大も、台湾の軍事侵攻や南シナ海、尖閣に対する軍事行動などレッドラインを定めることも重要だと思う。TPPに復帰したり北米経済連携を再構築したりと安心の経済枠組みを作ることも賛同する。ロシアについては異論もあるようだが、ロシアをこれ以上中国寄りにおいやらないため、ロシアとの関係改善を行うべきことも同感だ。おそらく反論している論者たちもさほど異論はないのではないか。
(2)「新X論文」の肝である、習近平への「全集中」については、習近平国家主席が中国の強硬路線に大きく影響していることは疑いなく、したがって、習近平主席が降板すれば、中国がより穏当になる可能性は高いと思うので、その意味で同意できるものの、鄧小平や胡錦涛は現状維持勢力であったので、そこに戻すことを目標とするというのは、少々ナイーブではないか。日本はその当時でも尖閣諸島に対する圧迫を受けていたし、南シナ海が埋め立てられたのは習近平時代よりずっと前にさかのぼる。
(3)もっといえば、「一見良い子になった中国」は、欧州の警戒を解き、ゆれる東南アジアを取り込み、米国とも上手くやって、対中警戒勢力に「邪魔」されることなく経済的にも技術的にも軍事的にも拡大し、現在の体制を維持したまま、より強大な存在となることだろう。その時は、本当の中国の世紀がくるのかもしれない。それが幸せなことなのかどうか、その時に共産党一党独裁のままの中国が同時に真の意味で自由で開かれた世界を愛し、近隣国の領土に対する野心を放棄した存在となっているのかどうか。中国が真の変化ではなく「韜光養晦」に戻っただけの状態なら、却って、力を結集できる素地のある現状よりもより巧妙に悪化する可能性だってある。
(4)いずれにせよ、中国は、100年マラソンともいうべき長らくの戦略に基づき行動しているとしたら、我々の側が即時的反応をするだけでは対処できないことは明らかだ。中国のような何十年にわたる戦略を持つことは民主主義国には難しい面があるが、「自由主義陣営側」が長期的な対中戦略を持とうという試みは必要なことだと思う。日本は中国と一衣帯水にある。安定し平和な中での中国との共存を願っている。残念ながら、現在、その状況は様々な中国の領土拡張的行動、人権を無視した行動により損なわれている。日本自身、日本としての対中長期戦略が今以上に必要な時はないと思う。新X論文とその世界的論争は、日本が長期の対中戦略を練る上で良い視座を提供してくれている。(おわり)
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