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2021-03-16 03:37
(連載2)米国に民主主義の理念語れ
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
日本が、アメリカとの関係を良好に維持したいと思うのであれば、この世界観の中で、日米同盟を、そして「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を位置づけることが、重要である。「まあ、まあ、抽象的なことは置いておいて、とりあえず尖閣守ってください」といった態度だけを日本側が見せるならば、円滑な日米同盟の発展を見込めないだろう。一つの試金石となる具体的な問題は、ミャンマーだ。
日本では「ミャンマーをいっそう中国に近づけるので制裁はダメだ」(日本はミャンマーに相当に投資した、とにかく回収しなければならない)といった発言を、訳知り顔で繰り返す近視眼的なエセ外交通がはびこっている。バイデン政権の方針に真っ向からぶつかる態度だ。「まあ、まあ、ミャンマーのことなんか置いておいて、とりあえず尖閣だけ守ってください」、といった態度を貫くとしたら、日米同盟は漂流し始めるだろう。ミャンマーの軍政は、大量の死者を出すことを辞さず国内反対派を鎮圧しており、中国とインドにはさまれたインド洋に面する場所で、アメリカの制裁をバカにした態度をとり続けている。日本がミャンマー情勢の緊迫度は過小評価するならば、足元をすくわれるだろう。
日本は、「制裁はダメだ、ミャンマーをさらにいっそう中国に近寄らせる」、という立場でバイデン政権を説得しようとするのか。あるいは人権と民主主義の理念をともに語って、ミャンマー軍幹部や国軍系企業に対する標的制裁の実効性を高めるための協力をする態度をとるのか。二つの立場は、両立しない。二つに一つだ。
全てを曖昧にして判断を避け続けることは不可能ではないかもしれない。だが、それが何らかの望ましい方向に向かっていく態度だとは思えない。日米同盟と、自由で開かれたアジア太平洋を、外交の基軸に据える覚悟があるのなら、迷う必要はない。私はそう考える。(おわり)
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