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2021-06-25 23:18
(連載1)ウイグル問題非難決議見送りと「ふわっとしたアジア主義」
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
国会でウイグル問題に関する対中非難の国会決議が見送られた。全野党が賛同する中、自民党の執行部が承認をしなかったという。人権問題などにかかわっても、(高齢者の投票行動が結果を左右する)選挙の際には利点はない、という実利的な考え方が背景にあるようだ。もっともさらに言えば、日本社会の組織的・世代的な政治文化の違いの問題なども背景にあると言える。
有本香氏は、ミャンマー国軍非難決議が採択されたことを引き合いに出し、対中国だから及び腰になっていると指摘する。正しい指摘だが、ミャンマーについても、逢沢一郎衆院議員、中川正春衆院議員、石橋通宏衆院議員らの精力的な働きによって、ようやく雰囲気が変わったところもある。
外務省が主導した場合、国際的なミャンマー国軍非難の共同声明の機会において、日本はことごとく参加を忌避してきた。だが日米共同声明やG7首脳声明や、国会決議の政治主導の流れが作られて、6月18日の国連総会におけるミャンマー国軍非難決議への日本の賛成票が生まれたと言える。日本は、ロヒンギャ問題などをはじめとして、ミャンマーに関する国連決議では、徹底して棄権する態度をとってきた。そのため、ミャンマーに関心を持つ人々は、今回の日本政府の賛成票を、画期的な動きと歓迎している。119カ国が賛成し、反対票はベラルーシのみだった。中国やロシアなど36カ国の間に入って、日本が棄権していたら、いよいよ日本の国際的地位が危ぶまれたところだった。
高度経済成長期に育ち、バブル経済を懐かしむ世代の人々は、アジアの大国・日本が、他のアジア諸国(の独裁者たち)に事なかれ主義の態度をとることを「日本独自の外交」などといった表現で脚色してきた。1989年天安門事件後に、日本が主導して中国共産党指導者を許す国際的気運を作ったことは、彼らにとっては栄光の自慢話である。(つづく)
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(連載1)ウイグル問題非難決議見送りと「ふわっとしたアジア主義」
篠田 英朗 2021-06-25 23:18
(連載2)ウイグル問題非難決議見送りと「ふわっとしたアジア主義」
篠田 英朗 2021-06-26 00:17
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