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2021-11-10 15:41

(連載2)人権か人命か、テロ行為への脆弱性

葛飾 西山 元教員・フリーライター
 鉄道においても、空港並みの手荷物確認が必要だと説く人もいる。逆にそのように日常を変えればテロリストの思うツボだから冷静でいることが大事だと説く人もいる。だが肝心なことが見落とされている。大量殺人はなにもテロリストだけが行うものではない。いま日本は、その気になれば誰でもいつでも簡単に大量殺人が行える状況にある。現に京都アニメーションも、小田急も、京王も、九州新幹線も、容疑者は一般人だ。
 
 さてそのような凶行から我々はどのように身を守れば良いのであろうか。「パニックにならずに冷静に車掌に連絡」などとも言われるが、ふつう列車に車掌は1人しかおらず、かつ最後尾だ。つまり伝えるすべはなく、車掌に伝わった頃にはすでに多くの人が死んでいるであろう。
 
 中国並みの監視社会になるのが良いとは言わない。しかし「人権か人命か」と選択を迫られると正直なところ私の心も揺らぐ。都市交通の電車・バスでX線検査を行うのは都市機能そのものに日々大渋滞を引き起こしてしまうので現実的ではない。しかし凶行の元をできるだけ断つことはできよう。漫画喫茶ではサイバーテロを抑止するため、行政指導の下、PC利用者にはもれなく身分証の提示を求める。これと同じように、誰でも入手可能で殺傷能力が高いガソリンの購入についてはそれくらいのことはしても良いのでないか。個人情報を登録した者でなければセルフスタンドを含めガソリンを購入できないようにすることは可能ではなかろうか。また最近では人の挙動をAIで瞬時に分析して未然に警告を出せるようで、高価ではあるがこうした監視カメラを駅の各所に配置するのも必要かもしれない。
 
 これはほんの一例であるが、実施するとなると猛烈な反対意見が噴出するであろう。どのような対策をとっても反対意見は出る。いかにして大量殺人から人命を守るか。政府は何を決断できるのか。国民は人命を守るために何を受忍しなければならないのか。連続する凶行事件を前に、政府だけでなく国民全体も、難しいが決断しなければならない難題の刃を咽喉元に突き付けられた感がしてならない。(おわり)
 
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(連載1)人権か人命か、テロ行為への脆弱性 葛飾 西山 2021-11-09 20:57
(連載2)人権か人命か、テロ行為への脆弱性 葛飾 西山 2021-11-10 15:41
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