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2021-11-18 03:10
(連載2)中国の安定の歴史と台湾問題
葛飾 西山
元教員・フリーライター
ここ最近中国・北京政府はどこまで本気なのかは分からないが、台湾の武力統一を図るような動きを見せている。北京政府は内政問題だと強弁を張るが、民族的に近接していても明らかに別個の政治主体であり、もし台湾進攻となると、現時点での東アジアの安定を揺るがす大事態となる。台湾政府は一足先に独立の文言を封印して現状維持にシフトチェンジしていることから、北京政府も「将来的には」というニュアンスで事態の切迫化を抑制することを願うばかりである。
強硬論は国民受けが良い。指導者の勇ましい姿を誇示できる。しかし強硬論は発言者の引っ込みがつかなってしまうところにその恐ろしさがある。あらかじめ落としどころを想定した強硬論ならまだ良いのだが、それとて国民の意識を高揚させてしまうと逆に尻に火がついたか形になって止められなくなる。これは戦前の日本が亡国の犠牲を払って経験したことでもある。
北京政府の権力構造が人民解放軍も含めてどのように絡み合っているのかは分からないが、強硬論が駆け引きの建前であることを祈りたい。強硬姿勢が続くと周辺国も有事に備えた態勢を取らざるを得ず、さらに緊張関係がコントロール不能になれば、どこかで偶発的に暴発する危険性が増す。
中国の繁栄は決して戦争と支配によって続いたのではない。外征はあくまで一過性のもので、200~400年近く続いた漢王朝、唐王朝、清王朝のように、むしろ戦争よりも安定、しかも現状を追認しながら安定を保っていた時間がはるかに長かった。そのような柔軟性こそが周辺民族を取り込んでいった中国社会の強みである。北京政府がこれから先の長い繁栄を願うなら、本当の中国の歴史に鑑み、「覇」ではなく「徳」によって対処することを望んでやまない。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)中国の安定の歴史と台湾問題
葛飾 西山 2021-11-17 13:39
(連載2)中国の安定の歴史と台湾問題
葛飾 西山 2021-11-18 03:10
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