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2022-05-18 22:17
(連載1)ウクライナ危機における複眼的外交の必要性
船田 元
衆議院議員
ロシアによるウクライナ侵略が開始されてから2か月以上が経過した。我々は戦闘の激しさや悲惨さを、映像で確認する日々を送っている。当初ロシアは短期決戦を目論んでいたようだが、思った以上にウクライナの抵抗が激しく、東部ドンバス地域は制圧しつつあるも、キーウをはじめ多くの地域で、撤退や転戦を余儀なくされている。
言うまでもなくこの度のロシアの侵攻は力による一方的な現状変更の試みであり、明らかに国際法違反である。また多くの無辜の市民を殺害するなど、非人道的行為も確認されている。国際刑事裁判所においては、戦争犯罪として認定すべきであり、その証拠を調査し、きちんと把握し、償わせなければならない。もちろん国際社会においてロシアを糾弾することは当然だが、一方で当面の停戦や事態の解決を目指すためには、なぜこのような事態に陥ってしまったのか、歴史や背景を踏まえた複眼的な思考が求められるのではないか。
中世にはこの地域にキエフ大公国(キーウ・ルーシ)が栄えたが、モンゴルによって滅ぼされた。その後はモスクワの方が栄えて、次第にロシアに組み込まれていく。近世・近代においてはポーランドやドイツに攻め込まれ、数百万人単位の犠牲者を出している。ロシアの一員としてその庇護を受ける一方、迫害も受け続け、ソ連時代はスターリンの粛清で多くの犠牲者を出している。まさに壮絶なウクライナの歴史である。このような背景により、ウクライナはロシアの同胞であるとともに、ロシアの庇護のもとにしか存在出来得ない国という意識が、ロシア国民の意識に植え付けられたのだろう。一方ウクライナ国民にとっては、ロシアからの影響力を極力弱めたいという意識が日増しに強くなって行ったのではないか。
1991年のソビエト連邦崩壊ののち、他の共和国同様、ウクライナも独立したが、国内では新ロシア派とヨーロッパ化を目指す勢力が激しくぶつかり合った。「オレンジ革命」「マイダン革命」そしてゼレンスキー政権でのEU加入やNATO加入の画策は、ロシア政府の怒りを買うこととなる。とりわけ猜疑心の強いプーチンの逆鱗に触れ、今回の軍事侵攻に発展したとも言える。ロシアからすると、自宅の庭先にNATOという敵の勢力が入り込んでくるという恐怖感を覚えることは、想像に難くない。(つづく)
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