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2022-07-15 22:44
(連載2)安倍元首相追悼でのトランプ氏偏重報道に抗議
河村 洋
外交評論家
私がトランプ氏偏重報道に強い異議を申し立てている理由は、歴代大統領とのバランスだけではない。この人物が抱える悪質性を考慮すれば、まるでトランプ贔屓さながらの報道ぶりを黙って見過ごせない。外交問題評議会のマックス・ブート氏は『ワシントン・ポスト』紙7月8日付の論説でトランプ氏がアメリカ政治から真剣性を奪い、それを低俗エンターテイメントに貶めてしまったと記している。実際に彼は人種、ジェンダー、その他で政治的にタブーであった差別用語を堂々と使い、自らの岩盤支持層を狂喜させた。そして詐欺、脱税、ロシア疑惑など、彼自身の大統領としての資質に関わる問題でも同様な態度であった。
それどころか1月6日暴動で群衆を教唆したトランプ氏には、安倍元首相銃撃事件で山上徹也容疑者を狂信的だと非難する資格など全くない。そもそもこの御仁は本年5月にテキサス州ユバルディで起きた銃撃事件に際し、教師達が勝手に犯人を撃ち殺せと言わんばかりの発言で物議を醸した。この調子では安倍氏にも「お前が山上を撃ち殺せ」くらいの認識の持ち主でないかと疑わざるを得ない。これは2016年大統領選挙で彼が掲げた「アメリカは海外防衛に多大な経費を費やす気はないので、日本、韓国、サウジアラビア、イスラエルといった国々は自前で核武装でもせよ」という主張と類似の論理である。一連の言動からは彼自身の粗暴な性格とともに、先述のブート氏の論説に記された政治的真剣性の欠如がうかがえる。
もっとも安倍元首相には、トランプ氏の当選という日本にとっての国難を上手く乗り切ったという多大な功績があることも事実である。何と言っても 彼は在任中に自分の閣僚達にさえ馬鹿(moron)、間抜け(dupe)などと言われたほどで、ヨーロッパ諸国などの首脳達から言動を嘲笑されるのも当然だった。そうしたトランプ前大統領を、安倍元首相が上手く「子守り」できた理由は謎と言う他にない。
日本国内には上記のような偏向報道もあったが、アントニー・ブリンケン国務長官がインドネシアでのG20外相会議および米泰二国間会談後に急遽訪日し、東京のアメリカ大使館にて安倍元首相への追悼演説を行なった。これによって日本人の間で、アメリカ政治に関する党派イデオロギー間のバランス感覚が正常に近づいたと思われる。ともかく日本のメディア各社に見られたトランプ贔屓さながらの報道には、強い怒りを込めて抗議の意を表したい。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)安倍元首相追悼でのトランプ氏偏重報道に抗議
河村 洋 2022-07-14 21:42
(連載2)安倍元首相追悼でのトランプ氏偏重報道に抗議
河村 洋 2022-07-15 22:44
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