イギリスはインド太平洋地域での法の支配擁護を目指す「自由で開かれたインド太平洋」作戦執行の多国間有志連合において、特に中国の海洋進出に鑑みれば重要なパ-トナーである。2021年3月にジョンソン政権が“Global Britain in a competitive age”と題した安全保障、開発、外交の統合見直しを発刊して以来、イギリスはインド太平洋への戦略的傾斜を進めている。この戦略に則って、イギリスは日本およびインドとの戦略的パートナーシップを深めている。特に日本とは今年に入ってRAA(日英部隊間協力円滑化協定)に調印し、相互の軍事施設へのアクセスと両国軍の訓練での協力が円滑化されることになった。また両国はイタリアとともにGCAP(グローバル航空戦闘プログラム)の研究開発を行なっている。インドとは、イギリスはロシア支援のFGFAに代わる国産次世代戦闘機への技術支援を提供している。さらにアメリカとオーストラリアとはAUKUSにも調印した。それらの合意に鑑みて、イギリスは日本、インド、オーストラリアといったインド太平洋地域の主要国とともに、そして最も重要なことにアメリカとの「特別関係」を通じ、中国に対抗するFOIPに深く関与するものと想定されている。しかし内政上の制約、中でも労働党金融ロビーによって、イギリスの対中抑止への確固とした貢献が低下することも考えられる。またスナク政権は対露姿勢とは違って、対中姿勢は必ずしもとまっているわけではない。