非常に重要なことにアメリカでは何人かの政治学者と歴史学者が、冷戦後の共和党は徐々に孤立主義に回帰していたと語っている。そうした状況を踏まえ、親トランプ派のアメリカ刷新センター(Center for Renewing America )のダン・コールドウェル氏は「共和党支持者には『リアリズムと自制』に基づいてアメリカは自由世界の主導者ではなく、世界の中での自らの役割を変えてゆくべきだとの考え方が支持される傾向が強まっている」と評している。同様な流れでヘリテージ財団はかつてのロナルド・レーガン時代には「強いアメリカ」を標榜したが、現在のケビン・ロバーツ所長はウクライナ援助に反対するばかりか、国防予算の削減さえ訴えている。バンダービルト大学のニコル・ヘマー准教授によると、そうしたアメリカ・ファーストの勢いが保守派の間で盛り返しつつあったことが典型的に表れている事象は1990年代に相次いだパット・ブキャナン氏の大統領選挙出馬である。非常に混乱を招くことに、孤立主義保守派の中にはジョシュ・ホーリー上院議員のように「問題はそこでなく、ここにある」と言ってアメリカの外交政策形成者達にヨーロッパから手を引き、自国の中産階級や労働者階級の生活を脅かす中国への対策に集中せよと訴えている。それには大西洋同盟派とアジア太平洋派の競合に留まらぬ問題がある。右翼ポピュリストの間の対中強硬派の見解はトランプ的な損益思考から来るもので、そのため彼らは同盟国をアメリカの負担になる存在と見做してしまう。彼らが主張する中国への戦略的シフトとは自分達をグローバル化の犠牲者だと感じる労働者階級の怒りを反映したものに過ぎない。外交政策で国際主義を奉じるロバート・ケーガン氏らが彼らの馬鹿げた考え方に反論するのも当然である。またデービッド・ペトレイアス退役米陸軍大将は昨年11月のカーネギー国際平和財団での講演に際して彼らの似非リアリズムと贋物の「小さな政府」思考に反論しているが、そのどちらも不動産屋の損益思考に基づいている。テロとの戦いで「アメリカを勝たせた男」は国防政策の関係者に「兵装調達システムを時代の要求に合わせ、全世界にわたる多方面の脅威に対処せよ」と訴えているのだ。