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2025-01-11 21:15
(連載2)日本のGDPがタイやベトナムに抜かれる日が近い
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
ではなぜほしい商品がないのか。これは日本の場合、「失われた30年」といわれる長期間の不景気やコロナウイルスによる内容から、新規商品の開発が行われていないということになる。実際に企業においては「研究部門」「新商品開発部門」の多くが廃止または縮小されているのであり、そのことによって「新たな使いやすい機能の開発」ができていないということになる。特に日本は元から基礎研究分野が得意ではなく、産官学の連携ができていない状況であり、また、軍事開発に関することがないので「必要に迫られる開発」ということがほとんどない状態であり商業ベースの開発ばかりになってしまうということから、見込みがない分野は早めに閉鎖され、または予算がつかないということになってしまい、「市場が予想できる商品」しかできない状態になってしまっている。このような状態を抜け出すためには、本来「頑張って無駄と思われる研究開発」を行う必要があり、市場が驚くような新規商品が必要になってくる。しかし、現在社会的に「コスパ(コストパフォーマンス:費用対効果)」及び「タイパ(タイムパフォーマンス:時間効率)」という言葉が流行しているように、効率ばかりを重視し、一見余裕や無駄と思われるものに手を伸ばす余裕がない社会構造になってしまっている。その内容を打破しない限り日本の停滞感の打破は難しいのではないか。一時的に景気がよくなっても、根本的な病巣を取り除いたことにはならないということになる。
一方、日経平均株価は非常に高水準になっている。2012年の野田内閣の時は日経平均が10000円を割れており、一時9000円割れで話題になっていた。記録的な縁赤で1ドル=79円というような円高であり、日本の輸出産業の多くが悲鳴を上げていた状態であった。そもそも為替というのはバランスであり、極端な円高も円安も、経済に大きな影響を与えることになる。そのようなことを考えれば、円高で日経平均株価が下がるということは、そのまま輸出産業が非常に多く、国内需要よりも海外での日本製品の消費が多いということを意味しているのである。しかし、現在は逆で1ドル=150円台後半であり、日経平均株価は30000円を超えている状態である。岸田内閣の最高値では40000円を超えているという状態であり2024年の8月に暴落したといっても、30000円を割ることはなかった。このような状態でありながら、日本の景況感はあまりよくない。これは、「企業利益があっても内部留保が多く、市場にカネが回らない」ということが原因である。ではなぜ企業は内部留保をするのか。
内部留保をするくらいであれば、新規商品開発をする、または投資をするなどをすればよいのであるが、残念ながらそのようなことをする企業は少ない。この要因は下記の内容に分類される。バブル崩壊以降、何が起きるかわからない状態になっており、企業も不安を抱えている。基本的に人も企業も「将来に対する不安」から「貯蓄をして備える」ということをしてしまい、その部分が市場に金銭が回らず景況感が悪化する現認になっている。具体的には、銀行による「貸しはがし」や「為替損」「政情不安による商業環境の変化」「銀行の融資環境の変化」「金利の上昇」などがあげられる。これらが予想をつかずに、防衛をすることしかないということになる。その企業の内部留保は2023年度末に600兆9857億円であり、その後も増え続けている。この金額が市場に流れ又は従業員の給与になれば、多くのことが解決する。一方で企業の健全性を計るのに、「留保利益=最初の留保利益‐純損益‐配当」という数式で表すようになっており、そのことから、留保がなければ不健全企業といわれてしまう。このようなことから「過剰内部留保に対する課税」ということが検討されるべきではないかといわれる。
このようなことから、「従業員の過剰な保護」「働き方改革」「企業の内部留保」が、市場の新規性と資金の停滞を生んでいる。資金の停滞は、そのまま景況感の悪化を生み出し、また企業の過剰な保護は「従業員の昇給を難しくする要因」になっている。これらが従業員一人一人が手取りが少なくなっている理由であり、経済政策をするのであればこの辺の構造改革から行わなければならないが、残念ながら日本の政治はそのようなところには向かっていない。冒頭に述べた記事では、消費税増税が悪いと、判で押したような話が出てきているが、実際のところでは、「直間比率の変更」「社会保障費の軽減」をすればよい話である。何かといえば消費税を悪者にするが、実際に、経済が悪化していない北欧などは消費税は50%前後であり日本の10%などは税率が低い方である。このような消費税悪者論を言う人ほど、福祉国家である北欧を理想としているが、その辺の矛盾に自分自身が気付いていないのである。このような人が経済を語っている間は日本の経済はよくならないであろう。では、どうするのか。それは、私なりの考えがあるが、またおいおい話すことにしよう。まずは消費税だけが悪いわけではないということを認識すべきである。(おわり)
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宇田川 敬介 2025-01-10 20:52
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宇田川 敬介 2025-01-11 21:15
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