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2025-03-15 20:12
(連載2)日露戦争の終結時のアメリカの調停とトランプ・バッシング
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
私は、現在のウクライナにとって、アメリカとの関係は死活的な重要性を持つので、アメリカとの関係の維持に高い優先順位を置くのは、当然であった、と考えている。ヨーロッパ諸国との円滑な関係の維持のためにも、アメリカとの良好な関係の維持が重要であった。戦時中の熱情から、戦争の継続それ自体を崇高な目的にして、アメリカとの関係を犠牲にしてもやむを得ないといった考え方には、危険が伴う、と考えてきた。
結果として、日本国内では、軍事評論家を中心とする「ウクライナ応援団」界隈の方々から「親露派」「老害」のレッテルを貼られて糾弾され、人格的攻撃も受けるようになった。恐らく、取り巻きは「ウクライナ応援団」的な方々なのであろう。ゼレンスキー大統領は、オーバル・オフィスで、バンス副大統領に「親露派」のように振る舞うのはやめろと説教をするかのように行動して、トランプ大統領の改心も願うような行動に出た。その結果、「失礼だ」と一蹴される破綻を招き、アメリカの軍事支援・情報支援の停止に象徴されるアメリカとの関係の悪化を招いた。事態がここまでに至っても、日本の学者・評論家・ジャーナリスト「ウクライナ応援団」層は、ひたすらゼレンスキー大統領を擁護し、トランプ大統領バッシングだけを繰り返している。メディアは、「ウクライナの世論調査ではゼレンスキー大統領を支持する答えが上昇した」という話ばかりを好んで扱い、アメリカの支援なしでも戦争を継続すべきだ、といった趣旨の論調を煽り続けている。
おそらくウクライナは、日露戦争当時の日本とは、違う道を歩んでいく。厳しい言い方になるが、ウクライナが戦争を継続して、活路を見出せる現実的可能性は乏しい。しかしそれでもなお戦争を継続したいと考える政治勢力は根強く、なんといっても政治支配者層が、そうした右派勢力を支持基盤にしているところがあり、簡単にはポーツマス条約のような判断をすることができない。私はゼレンスキー大統領が、現実に根差した政治判断をせざるをえなくなるだろうと考えているが、それは日露戦争当時の日本とは違った形で、国内に多くの混乱と禍根を残す曖昧なやり方で行われる恐れが強いとも考えている。
さらに言えば、国外の「ウクライナ応援団」が戦争継続を願っているので、これもあなどれない勢力である。ヨーロッパや日本における「ウクライナ応援団」の方々は、アメリカとの関係を清算して、ウクライナの戦争継続を応援し続けるべきだ、という趣旨の扇動的な言説を声高に叫び続けている。現代日本には陸軍は存在していない。しかし、代わってこの世論を主導しているのは、軍事評論家などの方々である。ポーツマス条約を締結した日本も、結局は、数十年をへて、アメリカとイギリスとの戦争を不可避とみなすようになり、ソ連とも戦争をした。その意味では、ポーツマス条約は、完全な成功例ではなく、単に時代の流れを遅延させただけの事件だったのかもしれない。日本もウクライナも、今後、いっそう軍事評論家が権勢を振るう時代になっていくのだろうか。大きな時代の流れである。(おわり)
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(連載1)日露戦争の終結時のアメリカの調停とトランプ・バッシング
篠田 英朗 2025-03-14 20:06
(連載2)日露戦争の終結時のアメリカの調停とトランプ・バッシング
篠田 英朗 2025-03-15 20:12
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