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2008-03-31 08:06
政府・与党は国民の「被統治能力」を信頼せよ
杉浦正章
政治評論家
この戦いは、国民のガバナビリティ(被統治能力)を低く読んで媚びを売る民主党と、それを信頼して説得しようとする政府・与党の宣伝戦でもある。首相自身も宣伝戦に乗り出したが、暫定税率法案衆院再可決にむけて、この宣伝戦の帰趨が極めて重要になることは言うまでもない。どちらが責任政党であるかを国民に問う戦いでもある。ガバナビリティの用語は、首相三木武夫が「統治能力」と誤訳して得々と使って以来現在でも時々誤用されるが、「被統治能力」だ。首相が言葉使いを間違うと後々までたたる。自分たちが選んだ政府に正しく統治される知恵である。簡単に言えば刀狩り出来る国は日本、出来ない国はイラク、アメリカ。大地震や災害で略奪が起きる国はアメリカとその他の国。起きない国は日本。
民主党は「ガソリン値下げ→政府による値上げ→国民生活の混乱→政局化」を当初から狙ってきた。値下げには成功したが、果たして思惑通り民衆が手玉に取られるだろうか。問題となるのは、政府・与党の衆院における暫定措置法の再可決でガソリン価格が元に戻った場合の、国民の反応である。民放のコメンテーターたちは「いったん値下げしたものが上がれば、国民は激怒して社会が大混乱する」と、浅薄な予想を立てまくっているが、そうだろうか。それほど民度が低いだろうか。物事は自分を尺度にして測るべきではない。日本ほど高等教育を受けて知的水準が高い国は珍しい。その国民の間で、値上げ反対の騒乱やガソリン・スタンド焼き討ち事件が発生するだろうか。おそらく民主党が扇動しても無理ではないか。せいぜい危険な買いだめの発生だが、ガソリンを容器で購入するには「火気厳禁」の表示がある金属容器が必要で、ポリタンクでの購入は消防法に違反する。ガソリン・スタンドに趣旨を徹底、行政指導する必要がある。
しかし、今後の宣伝戦の展開がまずいと、事態がこじれないとも言い切れない。民主党が「わが党が減税したのに、増税はもってのほか」と宣伝するのは目に見えている。「再可決即増税」キャンペーンである。実態は「減税テロ」を元に戻すだけなのだが、どう説明するかだ。ジャーナリスティックには「財源無視の夜盗減税」「悪女の深情け減税」などいくらでもあるが、政府・与党は正攻法でじゅんじゅんと国民を説得すべきだ。財源の裏打ちもなく減税した民主党の無責任ぶりを浮き彫りにし、国、地方の歳入欠陥という事態の重大さを説明することだ。また再可決問題も、与党内部にこの期に及んで躊躇の声が出ているが、民主党が一定の思惑を持って国会審議に応じず、参院を“占拠”する以上、この際腹をくくって「再議決恒常化」も念頭に置くぐらいの決意が必要だ。全新聞社が社説で暫定税率のをめぐる民主党の対応を批判しているというチャンスは滅多に来ないが、再議決となるとマスコミは割れることも念頭に置くべきだ。要するに国民のガバナビリティを信用することだ。
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