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2008-05-07 08:40
日本では「女性首相」はまだ無理
杉浦正章
政治評論家
一部メデイアで“小池百合子首相”説が取りざたされているが、日本の政治風土で女性首相が誕生するのは、まだまだ先の話だ。女性でも、英国の名宰相マーガレット・サッチャー並みの政治家でなければ、今の日本の抱える難題に対処できない。自民党の候補としては、小池も面白いが、それはあくまで本命候補の“当て馬”としてだ。新聞では産経新聞などが「小池氏急浮上」などと騒いでおり、政界の話題を呼んでいる。小泉純一郎が民主党の前原誠司、小池の居る席で「首相候補が二人もいる。面白いことになるかも知れない」と述べたことが発端。本人はまんざらでもなく、小泉チルドレンの猪口邦子、佐藤ゆかりなどと組んで、政策ユニットを立ち上げた。篠山紀信の写真を使っての大々的PRだ。
しかし、篠山の写真は、皮肉にもタレントのポスターのようなイメージとなり、永田町で「政界キャンディーズ」の別称を得る結果となった。事程左様に、最近の日本の女性議員はタレント的である。世界の女性政治家をイメージしてみるとよい。サッチャー(英)を筆頭に、コンドリーザ・ライス(米)、 メルケル(独)と首相、閣僚をやる女性の知性と迫力、重厚さは、別物である。もちろん米民主党で選挙戦を戦う上院議員・ヒラリーは、並みの男にはない不屈の闘志を、世界に示し続けている。日本の一流女性政治家と言えば、平塚らいてう、市川房枝、土井たか子あたりだろうが、それでも首相候補としては、首をかしげる。日本の女性政治家が概してさえないのは、閣僚の数にも現れている。女性閣僚は、池田内閣の中山マサ以来31人に過ぎない。欧州では、現職閣僚の半数を女性が占める国はざらにある。女性差別というより、政治力の差がもたらしたものであろう。小池が首相の激務に対応できるかだ。これは過去の政治行動から分析するしかないが、概して「政治的でない政治」を行っている。
防衛相のころは、唐突に出した次官・守屋武昌更迭案がマスコミのバッシングにあい、小池が推薦していた人物とは別の、増田好平を事務次官にする結果となった。小池はその防衛相も、突然訳の分かりにくい理由で、改造内閣への残留を自ら辞退している。要するに、行動が感情的、短絡的なのである。環境相のときのクールビズが有名だが、私はクールビズが日本の政界・官界をだらしないイメージに変えたと思う。胸元と同じで、政治に締まりがなくなった。単に環境対策でネクタイを外せというだけで、背広・ネクタイというビジネスウエアの決定版に替わるファッションを示さなかったからである。小池は、政党は自由党、保守党、自由民主党と変わり、接近した実力者は細川護熙、小沢一郎、二階俊博、小泉純一郎、安倍晋三らであり、まさに渡り歩いた感じだ。その軌跡は場当たり的であり、政治信条に基づく一貫性に欠ける。
さらに、もし小池が政権を担った場合、どのような重荷がかかるかだが、ねじれ国会からくる重圧、解散・総選挙、政界再編など、ベストの政治家をもってしても、なかなか乗り切れない政治状況だ。意外とインテリ女性層に反感が強く、支持率も上がるまい。だいいち、所属する町村派の候補は、当然官房長官・町村信孝だ。元首相・森喜朗が「小池首相は小泉さんの冗談」と述べたのは、まさに的を射ている。しかし 「瓢箪から駒が出る」のたとえもあり、自民党総裁選挙となった場合、「小池擁立」の利点が一つだけある。それは本命候補の対立候補の意味合いだ。これほど話題性のある総裁選挙はない。例えば「麻生太郎対小池」の構図は、役者はいささか不足だが、米民主党並みに注目を浴びる。自民党に支持が少しは戻るかも知れない。本命の当て馬としての役割である。
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杉浦正章 2008-05-07 08:40
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峰村 泰三 2008-05-08 18:35
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