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2008-05-13 10:52
(連載)胡主席の訪日を評価する(1)
角田勝彦
団体役員・元大使
昨年末の福田首相訪中では、「桜咲くころ」と合意されながら、毒入りギョーザ事件やチベット騒乱、聖火リレーをめぐる混乱から5月上旬にずれ込んだ胡錦濤中国国家主席の訪日がやっと終わった。両国政府も「無事に済んで何より」とほっとしていよう。中国は、今次訪日を「成功」と満足の意を示した。わが国内には、胡主席訪日歓迎を対中弱腰外交の現れとして、具体的成果に乏しいとか、チベット騒乱後初めての中国首脳の外国訪問となる今回の訪日が中国の免罪符として利用されるだけではないか、との批判もあるが、中国が成功と評価するのなら、成功と見てよいのである。日本が中国の「歴史認識」と愛国主義で悩まされる度合いが少なくなろう。さらに「戦略的互恵関係」では、日本が獲ち得たところもある。毒入りギョーザ、東シナ海ガス田開発、チベットなどの個別問題についても、腰を据えて、少なくとも今後数ヶ月の推移を注目すべきだろう。
バイ及びマルチの両面について、以下私としてのとりあえずの評価を述べたい。バイの面では、(小泉元首相時代の「氷」が、2006年10月の安倍前首相訪中で「割れ」、福田首相訪中で「溶けた」後の)「暖かい春の旅」と胡主席が表現したように、友好ムードの醸成が第一目的になった。10年ぶりの中国元首の訪日として、(とくに胡主席としては)成功を義務づけられた今次訪問で、訪日までの最終決着を目指していた東シナ海ガス田開発問題などで合意が出来なかった以上、これはやむを得ない選択だったといえる。福田首相は会談で「大切なことは、日中双方、特に指導者が、両国の進むべき道、大局に対する信念を共有し、その中で問題を解決していくことだ」と述べ、両国首脳は毎年、相互訪問することで合意した。
テレビなどの中国マスコミで、胡主席が日本で歓迎されている旨の大々的な報道がなされたことは、中国国民の反日感情を少しは和らげたと期待される。胡主席は、日本が戦後、平和国家として世界の安定に貢献してきたことを認め、歴史認識でなく未来志向の互恵関係を重視する姿勢をアピールした。また「日本の対中円借款が、インフラ建設、環境保護、エネルギー開発などで、中国の近代化建設に積極的な役割を果たした」と日本への謝意を表明した。パンダ貸与も実現した。残念ながら、毒入りギョーザ事件などへの胡主席の対応は、それくらいでは、日本国民に生じた嫌中感を和らげるものではなかった。福田首相への支持率が、胡主席訪日を得点として上昇する見込みも薄い。もちろん、かっての靖国参拝をめぐる混乱に象徴されるように、ムードははかないものである。ポスト福田がどうなるかは判らない。(つづく)
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