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2008-10-29 07:58
金融機能強化法を「都知事救済」にあてるな
杉浦 正章
政治評論家
金融危機対策の一つとして、金融機関に公的資金を注入する金融機能強化法改正案の本格審議が10月29日から国会で始まる。まさかこの新法を新銀行東京の救済に使うことはあるまいと思っていたが、そうなるとすればもってのほかである。世論のごうごうたる反対を押し切って都知事・石原慎太郎が都民の税金400億円の追加出資をこの春にしたばかりである。加えて、自民党が国民の血税注入まで考えているとしたら、何をか言わんやである。石原の責任は重大だ。
「おやっ」と思ったのは、26日のNHK番組。自民党の幹事長代理石原伸晃が金融機能強化法改正案について「法律の中では、銀行に区別はない」と述べ、新銀行東京も救済対象に含まれるとの見解を示したのだ。民主党代表代行・菅直人の質問に答えたものだが、石原と言えば自民党東京都連の会長でもある。よもや父親擁護に回ることはあるまいと思っていたが、この構図は父親の大失政をフォローアップする形としか思えない。首相・麻生太郎がこの問題をどのように認識しているかはまだ不明だが、新銀行東京に公的資金を注入するようなことになれば、それこそ政権を揺るがす大問題に発展することを心すべきだ。すでに29日付けの全国紙全紙が社説で反対している。
新銀行東京は、石原慎太郎が都知事再選の公約として打ち出したものだが、先に明らかになった行員による不正融資はそのずさんな経営内容を象徴するものにほかならない。このほど検査に入った金融庁は、同行に対して行政処分を発動する方向で、業務改善命令を出すことになるものとみられる。都の追加出資の効果はなく、むしろ出資を棄損する可能性が出て来たといわれる。要するに追加出資も赤字に食われていきかねない状況だ。去る3月に新銀行東京の破たんは目に見えているとして、マスコミがあげて反対したにもかかわらず、都議会与党の自民、公明両党は石原の意を受けて注入を議決してしまった。拙稿も当初から指摘したが、石原の400億円注入はまさに新銀行東京の破たんを先送りにして自らの責任回避、延命を図るための方策であった。
石原は不正融資事件について「旧経営陣の責任が問われるべきだ」と、まるで他人事のような口ぶりだが、事件の根源は、素人が海千山千の金融業界に手を出して、“文士の商法”を行ったことにあるのだ。石原は他の金融機関との提携で延命させる道を探ってきたが、この金融危機に“沈む泥舟”に相乗りする金融機関はない。設立時の1000億円に加え、400億円を追加出資した石原の責任は重い。加えて公的資金を注入するようなことをすれば、まさに“泥棒に追銭”の構図となる。石原は責任を転嫁せず、みずからすべての責任をとって都知事を辞任し、新銀行東京はこれ以上傷口を拡大させず、早期に閉店するべきだ。
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