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2008-11-12 08:16
唯我独尊極まる田母神思想
杉浦 正章
政治評論家
田母神俊雄前空幕僚長の開き直り発言は、昔有楽町で演説していた右翼のような唯我独尊思想とそっくりであり、鳥肌の立つ思いであった。おまけに田母神思想は、自衛隊幹部に歴史観・国家観の教育として浸透していた。まさに文民統制は崩れつつあったのだ。やはり諸悪の根源は、これだけバランスの崩れた人物を登用するという恣意的人事を行った、悪名高き前次官・守屋武昌にあるのではないか。繰り返し主張するが、防衛省は田母神思想を「洗浄」しなければ、国民の信頼を取り戻せない。
国会質疑を聞いていたが、質問する与野党議員のだらしのなさが目立った。まるでインタビューのような質問ばかりで、突っ込みがたりず、前空幕長の独壇場を許してしまった。本人は開き直って言いたい放題。証人喚問ではないから限度があるが、質問者は勉強不足の上、自制のしすぎだ。しかしその独壇場発言のおかげで、田母神論文の基礎となる思想の“危うさ”“稚拙度”が改めて明らかになった。すべてが事実誤認に基づく歴史観、国家感に根ざしているうえに、言論の自由のはき違え、だだっ子のような自己主張など、感情的・情緒的主張に満ちあふれて入ることが判明した。自分の所業がこれまで自衛隊が災害救助やイラク復興支援など過酷な海外派遣で営々として築いて来た信頼と実績を、根底から打ち壊すことになることに気づいていない。昔の関東軍のような軍人だ。
11日の参院外交防衛委員会で参考人質疑における田母神発言の問題点を整理してみた。カッコ内は本人の発言である。
★「更迭は村山見解による言論統制だ」「自衛官にも言論の自由が認められている。どこが悪かったか」
→まったく立場を忘れて、一般論にすり替えている。空幕トップだから更迭されたことが、度し難いほど分かっていない。言論統制が困るなら、統幕長を自ら辞して、自由に発言したらいい。それなら全く統制されない。それが言論の自由というものだ。はき違えてはいけない。隊員教育までゆがめておいて、何が言論の自由だ。
★「(なぜ更迭されたかについて)マスコミ等で騒がれたからではないか」→政府はマスコミが騒ぐ前に更迭している。自ら更迭された事実関係の認識までできないのでは、一朝有事の判断もできないということになる。
★「(改憲について)国を守ることにこれほど意見が割れるなら、改正すべきだ」→更迭に関して国論はほとんど割れていない。ごうごうたる自らへの非難の声が分かっていない。新聞も支持しているのは一部右翼紙だけだ。
★「(隊員に懸賞論文応募を指示したかについて)私が指示すれば、1000を超える数が集まる」→「偉い、偉い」と言ってやりたいが、発言が空しい。決起を促せば1000や2000は集まるとでも言いたいのか。
★「悪い国だと言っては士気が崩れるし、こういうピシッとした国家・歴史観を持たせなければ、国は守れない」→村山談話完全否定の国家観・歴史観を自衛隊が持っていると分かれば、北東アジア情勢は一挙に緊張状態に陥り、我が国の安全保障が危うくなる。国を守れなくなるのは、そのケースにほかならない。国を守ることが本分の自衛隊が「自衛隊発の緊張」を発生させては話にならない。
★「(記者団に)これだけ長い間自衛官をやってきて、国家国民のためだと思ってやってきて、そんなに私が悪いことしたのでしょうか」→民間会社でも、いくら長く働いても服務規律に反する行為をすれば、人事のメスが入る。いくら会社のために尽くしてもだ。国家公務員たるものが、情緒的かつ感情的な訴え方をしても、誰も同情しない。泣き落としに出ても駄目だ。
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投稿履歴
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杉浦 正章 2008-11-12 08:16
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