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2010-02-06 02:19
(連載)日米関係の将来と普天間基地移設問題(5)
中岡 望
ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
東アジアの安全保障にとって最大の脅威は、中国の台頭である。中国の軍事費は、毎年20%前後の伸び率を記録している。将来は空母を保有することになると見られている。しかも、まだ国内の民主化が十分に進んでいないことも、大きな潜在的脅威の要因となりうる。しかし、その一方で米中関係は大きく発展している。ポールソン前財務長官の肝いりで始まった「米中戦略経済対話」を通して、米中両国は閣僚級レベルでのコミュニケーションのチャンネルを確立している。また米中の経済関係は急速に相互依存関係を強めている。通商問題を巡る対立は頻繁に起こっているが、それは必ずしも安全保障上の問題とはいえないし、逆にそうした摩擦は、両国の経済関係が不可分なものになっている証左とも言える。
中国は、2010年にGDPの規模で日本を追い抜くと予想され、国際社会での責任も強まっている。ブッシュ政権の時、ゼーリック国務副長官(現世銀総裁)は、中国を国際社会の“ステークホールダー”と呼び、国際社会での責任を果たすことを求めた。今後も中国の民主化問題、通商摩擦、台湾海峡問題などで、米中間に緊張が発生する可能性は否定できないが、中国がアメリカや日本などの周辺国と全面的な対立に入る可能性は低い、と考えるのが現実的であろう。この点で注目すべき動きとして、米中軍事交流がある。2009年10月に徐才厚国家中央軍事委員会副主席がアメリカを訪問したが、この訪米について、11月17日のオバマ大統領と胡錦濤主席の共同声明は、「持続的かつ信頼可能な軍事的関係の促進に向かって、具体的な一歩が踏み出された」「両国は交流のレベルと頻度を高めることも含め、両国の軍事関係者の積極的な交流と協力のプログラムを実施する」と述べている。
おそらくアメリカと中国の間には一種の“親和力”のようなものが存在するのであろう。筆者はそういう印象をもつ。もちろん朝鮮半島の安全保障問題は残るが、東アジアでも冷戦構造は大きく変わりつつあることは間違いない。事実、アメリカはそうした安全保障の状況の変化に対応して、米軍の再編成を進めている。日米安全保障条約の前提も間違いなく変わりつつある。
アメリカの戦略的な判断に任せるのではなく、日本も積極的に発言し、新しい地域の安全保障のあり方を説くべき時にきている。それは鳩山首相のいう「より対等な日米パートナーシップ」が目指すところではないのだろうか。そうした中で本当にどの程度の在日米軍が必要なのか、沖縄の役割は何なのかを問い直す時期かもしれない。もちろん対等なパートナーシップを求めることは、地域の安全保障に対して応分な責任を担うことも意味する。日本が世界や地域の安全保障にどう関わっていくかという明確なビジョンが必要になる。それなくして日米の「対等なパートナーシップ」は存在しえないし、アメリカを説得することもできないだろう。(つづく)
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