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2010-03-25 10:05
(連載)急速に支持を失うオバマ大統領(3)
中岡 望
ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
オバマ大統領あるいは民主党指導部は何を間違えたのだろうか。2008年の大統領選挙と議会選挙で民主党は大勝した。だが、出口調査は別のアメリカの姿を映し出していた。政治的信条で保守派と答えた比率は34%、リベラル派は22%、無党派は44%であった。オバマ大統領と民主党が選挙で勝利したのは、ブッシュ政権の不人気と景気の悪化を背景に無党派層が大挙してオバマ候補の支持に回ったからである。さらにオバマ大統領の「変化」の訴えが、政治的無関心層である若者の動員につながったことが選挙の勝利に結びついた。
オバマ大統領の勝利は、メディアで喧伝された保守主義に対する“リベラリズムの反革命”ではなかった。人々は必ずしも“大きな政府”を求めているわけではなかった。CNNの世論調査では、昨年2月18日の段階では積極的な景気政策を支持すると答えた比率は60%であったが、今年の1月8日の調査では支持の比率は42%と低下し、不支持という回答は39%から56%へ増えている。アメリカ人は一般的に政府というものに対して強い不信感を抱いており、基本的に“中道右派”の国である。だが、オバマ大統領と民主党指導部は、ネオ・リベラリズムの不人気もあり、選挙の勝利を“リベラル派”の勝利と解釈する誤りを犯した。国民は必ずしも医療保険制度改革などの大胆な政策転換を求めていなかったのである。
さらに選挙での大勝を背景に、議会で共和党を圧倒できるとの判断をしたことだ。民主党は両院で過半数を制した。それを背景に民主党の政策を実現できると期待した。だが、アメリカの政治では革命的ともいえるニューディール政策を実現したルーズベルト政権の時と比べると、民主党の議会勢力は十分ではなかった。1933年の選挙で民主党は大勝したが、その時、下院の議席は民主党310に対して共和党117、上院は民主党の60に対して共和党35に過ぎなかった。35年の中間選挙では民主党は下院の319を制し、上院の議席を69に増やしている。ルーズベルト大統領は民主党が議会を圧倒する中で大胆な政策をまったく抵抗なく実現することができた。
これに対して、現在の議会勢力は下院が民主党256に対して共和党178と空席1である。上院は民主党の59に対して共和党41になっている。マサチューセッツ州予備選挙の前、民主党は議事妨害を阻止できる議席数60を確保していたが、選挙後の現在では共和党の支持なくして法案を成立させることが極めて厳しくなっている。民主党が大統領選挙で圧勝したことで、共和党は足並みを乱し、民主党主導の議会運営ができるという判断ミスを犯してしまった。共和党は保守派の草の根運動であるティーパーティ運動の盛り上がりもあり、むしろイデオロギー的対立姿勢を強めている。オバマ政権の原動力であった無党派層と若者は、そうした議会の状況とオバマ大統領の指導力の欠如に失望し、オバマ離れを示している。(つづく)
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