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2010-09-10 09:42
(連載)中国の北極海進出とわが国の対応(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
北極海は南極条約のある南極大陸とは異なり、資源開発を凍結するという特別な条約が結ばれているわけではないので、国際海洋法の原則に従って、沿岸国の権利が強いのは当然である。さらに、国連海洋法条約第234条の規定により、気象条件が厳しく氷結することのある北極海においては、沿岸国が環境保護を目的に独自の法律を定めることができるので、他の一般の海域と比べて、よりいっそう沿岸国に有利となる。中国の強硬姿勢は、こうした国際海洋法の示す方向性と照らし合わせても、極めて奇異に映り、沿岸国の強い警戒を招くことは必至である。そういう意味では、中国のなりふり構わぬやり方は拙劣である。
我が国も、海底資源や北極海航路の利用などで、当然、北極海には注目すべきだが、中国のようなやり方をするべきでないことは言うまでもない。我が国は、北極海に関してはあくまでも「外様」であることを忘れずに、沿岸国との協力関係を節度をもちつつ発展させていくべきである。沿岸国との間で信頼関係を結び、スムーズに資源の共同開発を行えるようにもっていく他ない。日本の強みはやはり技術力であり、それは国策としてうまく生かすべきである。
特に連携を深めるとよいと思われる沿岸国の候補としては、カナダを挙げておきたい。カナダは北西航路の沿岸にあたる。また、北極圏の資源だけでなく、ウラン鉱石の供給先としても重要である。FTAも視野に入れて経済的に連携を深めることを視野に入れたい。また、英国は北極評議会の正式加盟国ではないが、裏を返せば、我が国と連携することで発言力を高めることができるということになる。英国との信頼関係を深めることにより、ともに北極海での権益を得ることにつながるかもしれない。
また、グローバルな海洋ガバナンスに積極的に関与して、日本が世界の海に関するガバナンスの中核を担う姿勢を鮮明にしておくべきであろう。すなわち海洋ガバナンスのリーダーとして自らを位置付けることにより、ソフトパワーを増大させるのである。もちろん、それが直ちに北極海での権益獲得に結び付くほど甘いものではないが、そうしなければ、北極海での資源開発のルール作りに関与する資格すら認めてもらえないと言える。(おわり)
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高峰 康修 2010-09-09 12:53
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高峰 康修 2010-09-10 09:42
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