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2010-12-02 16:33
(連載)米中間選挙の結果を分析する(2)
中岡 望
・ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
今回の選挙結果を1994年の選挙結果と比較する議論がある。クリントン大統領は中間選挙で大敗したにも拘わらず、再選を果たしている。両院で過半数を占めた共和党は、ニュート・ギングリッチ議長を中心にクリントン政権に攻撃を仕掛けた。だが、クリントン大統領は「選挙結果は国民の声である」として、共和党と妥協する道を選ぶ。すなわち、当初試みた医療保険制度改革は断念するなど、中道右派路線に舵取りを変え、歳出削減、財政赤字、福祉政策などで共和党の政策を取り入れていく。
オバマ大統領は、議会を支配する共和党にどう対応しようとしているのだろうか。11月3日に行った記者会見で、オバマ大統領は共和党に協力を呼びかけている。だがクリントン大統領のように共和党との間に妥協点を見いだすことはできるのだろうか。また再選の道を拓くことができるのだろうか。APの世論調査では51%が「オバマ大統領の再選を望んでいない」と答えている。また民主党支持者の47%が「民主党の大統領予備選挙で対立候補が出てくる」と予想している。かつてジョンソン大統領は予備選挙で勝ち目がないと判断して、現職でありながら出馬を取りやめている。
最初の試練は、医療保険制度改革の取り扱いだろう。共和党やティー・パーティ運動は、同法の廃棄を選挙公約に掲げている。来年1月から始まる新議会で、共和党は医療保険制度改革の廃棄を求める法案を提出するだろう。下院は圧倒的多数で可決できるが、上院では民主党が過半数をかろうじて維持しており、簡単には成立しないだろう。ただ民主党の中にも選挙中に同法の廃棄を主張する議員もいた。仮に法案が可決されても、大統領は拒否権を発動して、阻止するのは間違いない。ただ、そうなれば共和党との協調路線も言葉通りには実現しないだろう。
民主党内でも意見は割れている。選挙結果を重視して「オバマ政権は路線変更をすべきだ」と主張する議員がいる。いわばクリントン路線である。「歳出削減、減税問題、通商政策などで共和党と妥協可能だ」との指摘もある。これに対して「私たちはアメリカを新しい方向に導いてきた。過去の失敗した政策に戻すわけにはいなかい」と、民主党トップのペロシ下院議長は協調路線を批判している。また協調路線は左派のリベラル派の反発を招くだろう。
リベラル派の中には「オバマ大統領が再選を果たすには、原理原則に戻ることだ」と主張するグループも存在する。トルーマン大統領は共和党が両院の多数を占めていた共和党と対決姿勢を貫き、1948年の大統領選挙で「共和党の妨害で何も実現できない」と訴えたのが奏功し、再選を果たした例がある。協調路線を取るにせよ、対決路線を取るにせよ、オバマ大統領は国民との接点を再構築し、明確な物語を国民に語りかけなければならないだろう。あるいは2012年に向かって景気が急速に回復するのを祈るしかないだろう。“ニュー・オバマ”がどのような姿になるのか、そう遠くない日に明らかになるだろう。(おわり)
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