ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2011-01-28 18:17
民主化推進に、もはや軍事力は不要
川上 高司
拓殖大学教授
昨年末から政情不安に陥っていたチュニジアで、とうとう現職のベン・アリ大統領が亡命し、政権が崩壊した。1987年、当時の政権とイスラム反政府勢力との抗争の最中に、現職大統領にとってかわって、政権を掌握し、抗争の混乱を収束させたのがベン・アリだった。その後1989年の選挙で正式に大統領となったが、以後20年以上にわたって大統領の座に座った。当時のベン・アリは、抗争の混乱の中でチュニジアの救世主と国民から慕われ、民主化を進めた、最も進んだ民主主義者だった。しかし、あまりにも長く大統領の座に座り続けたためか、やがて市民を弾圧し、独裁するようになっていった。
反乱の始まりは、小さな町だった。26歳の大卒で、失業中の青年が、屋台商売を当局に阻止されたため、抗議の感電自殺を図った。この事態に怒った市民が、抗議行動を開始し、瞬く間に首都に拡大した。チュニジアは経済が低迷していたところへ、世界金融危機の影響でさらに経済が悪化。特に、大卒の失業率が高くなって、不満がたまっていた。国民への抑圧政治も我慢の限界に達していたため、反政府勢力はネットを通じて反政府活動を呼びかけた。その際に活動拠点となったのは、フェースブックだったが、ここには政府の弾圧が及んでいなかった。さらには、ウイキリークスの外交文書の暴露も拍車をかけた。この暴露によって、ベン・アリ大統領とその一族の腐敗ぶりが明らかとなり、いっそう反政府活動は刺激され、ついに独裁政権を倒した。
ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終焉したとき、その動きに多大な影響を与えたのが、当時最先端技術だった衛星放送だった。東側の市民は、国境を越えて流れ込む衛星放送を見て、世界を知り、民主化へと動いた。最近では、イランでツイッターが民主化の動きを刺激した。チュニジアではフェースブックが民主化の活動拠点となった。アメリカは民主主義の伝搬をその使命とし、軍事力をもって敢行してきた。今では、民主主義が広がるのに、軍事力は不要である。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
民主化推進に、もはや軍事力は不要
川上 高司 2011-01-28 18:17
┗
「使われずとも、存在する」ことで役に立つ軍事力
河村 洋 2011-02-01 23:05
一覧へ戻る
総論稿数:5546本
公益財団法人
日本国際フォーラム