したがって、今後の日本の国家としてのあり方は、若さの活力ではなく、老熟した人間の知恵をもつ国家として、存続する道を模索すべきではないだろうか。停滞や衰退などといわれれば、気が滅入る。しかし、低成長ながら、着実に円熟し、省エネで効率のよい文明を目指す、というふうに考え方を転換してみたらどうだろう。ある意味では、江戸時代のような中世的落ち着きのある社会を構築しつつも、未来を目指す、つまり、back to the futureという心のもち方もありえるのではないか。江戸時代において、日本の文化と文明の程度は、一面では西欧のレベルを超えていた(例えば、識字率、教育熱心)というのが、世界学界の定説である。(おわり)