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2011-07-23 12:20
(連載)海中ウラン採取技術の確立で日本はエネルギー資源大国になれる(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
実際、海中のウランを採取する技術は、1970年代から研究が進んでおり、日本原子力機構が開発した「放射線グラフト重合法」という、特殊な繊維を用いて重金属だけを捕集する方法は、かなり実用化に近付いている。日本原子力機構によれば、この手法を用いてウランを採取した場合の原発の発電コストは、天然ウランや濃縮ウランを輸入して用いる現在の原発と、火力発電の、ちょうど中間ぐらいだという。政策的に、技術向上をあと一押しすれば、商業ベースに乗ることが、現実のものとして視野に入ってくると思われる。
現在の、我が国の、原発燃料用のウランの輸入先は、豪州、カナダ、米国といった、政情不安や剥き出しの資源ナショナリズムとはおよそ縁遠い、民主主義の先進国である。その点では、中東に大きく依存している原油などに比べれば、安定的な資源であるといえる。しかし、需要増に伴う価格上昇は免れようがない。
ここに、黒潮からウランを採取する技術を確立して、ウランの価格上昇を抑制させるとともに、エネルギー自給率を向上させる意義がある。そして、我が国がウランの主要供給国になって、厳格な核燃料輸出管理の国際レジームに参画することにより、核の不拡散にも貢献することができる。これは、我が国の国際的影響力を大いに高めることに繋がる。
今すぐ脱原発を実施するのが非現実的な話であることは、多くの人の理解するところとなった。しかし、長期的に原発への依存を減らしていくべきだという議論は、依然として強い。もちろん、福島第一原発の事故がまだ収束していない段階だから、原発の維持や推進という主張が容易には受け入れられないのは分かるが、一時の感情で、ウランの海水からの採取技術の発展を殺してしまうようなことがあれば、我が国の国益にとって重大な損失である。あえて、「海洋からのウラン採取技術の確立でエネルギー自給率の向上を」と主張したい。(おわり)
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(連載)海中ウラン採取技術の確立で日本はエネルギー資源大国になれる(1)
高峰 康修 2011-07-22 14:06
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(連載)海中ウラン採取技術の確立で日本はエネルギー資源大国になれる(2)
高峰 康修 2011-07-23 12:20
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