しかし、原発は核兵器ではない。核分裂の制御技術は存在する。1953年12月8日、アイゼンハワー米国大統領は、国連総会で「Atoms for Peace」と題する演説を行い、原子力を平和のために利用することを提唱した。1957年に国際原子力機関 IAEA が設立された。日本では、中曽根元首相が原子力三法を成立させ、資源を持たぬ日本の国策として原発建設を推進した。「平和のための原子力」という観念は多くの人を引きつけた。原爆の犠牲者で、平和のシンボルのような永井隆博士さえ、「原子力が汽船も汽車も飛行機も走らすことができる。(中略)人間はどれほど幸福になるかしれないね」(「長崎の鐘」)と書いた。鉄腕アトムも、原子力をエネルギー源として動く少年ロボットである。被爆者でつくる日本原水爆被害者団体協議会も1956年結成時に「原子力を決定的に人類の幸福と繁栄の方向に向かわせるということこそが、私たちの生きる限りの唯一の願い」と宣言し、原子力の平和利用を否定してこなかった(ただし、この7月「全原発を廃炉にするよう」国に求めていくことを決めた)。