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2013-08-13 14:34
(連載)米国に日本の声をどう反映させるか(2)
河村 洋
外交評論家
今年の4月にジョン・ケリー米国務長官が東アジアを歴訪した際に、東シナ海をめぐる日中間の対立でアメリカが中国に宥和せぬように要求したのは、国際介入派の人達である。ジョン・マケイン氏、リンゼイ・グラム氏、マルコ・ルビオ氏をはじめとする8人の共和党上院議員がケリー長官に公開書簡を送り、「民主党のジム・ウェブ上院議員及び無所属のジョセフ・リーバーマン上院議員らが、尖閣諸島への中国の侵攻の際にはアメリカが日本を防衛する義務を明言するために挿入させた国防授権法の修正条項を忘れることなきように」と訴えた。よって、ケリー長官宛の公開書簡は党派を超えた性格を持つ。また、彼らのほと
んどはオバマ政権の中東政策を超大国の自殺行為だと批判している。問題は、アメリカの戦略の地域バランスでも、日本への注目度でもない。パックス・アメリカーナを守る責務を全うしようという意志こそ、日本にとっても他の国々にとっても利益となる。最も重要なことには、9・11テロ事件によってパックス・アメリカーナの維持こそがアメリカ自身の国益に適うことが明らかになった。真のパートナーシップとは互恵的なものである。こうしたことは、信頼性の低い「日本ロビー」などを通じては達成できない。
幸いなことに、アメリカ国内の国際派からの動きもある。アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)、ヘリテージ財団、外交政策イニシアチブは「国防の守護」(Defending Defense)という共同プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトでは財政支出強制削減に見られるような緊縮予算を強いられる時期に、どのようにしてアメリカの国防力を質量とも維持してゆくかを模索している。さらに重要なことに、政界の重鎮からもポスト・アメリカ主義と孤立主義への逆襲の動きが見られる。元民主党上院議員のジョセフ・リーバーマン氏と元共和党上院議員のジョン・カイル氏は、AEIにアメリカ国際主義プロジェクト(American Internationalism Project)を設立した。このプロジェクトの目的は、テロ、中国の拡張主義、核拡散など多様化した脅威に受動的に対応することではない。国際主義プロジェクトではもっと積極的にアメリカによる自由の価値観に基づいた世界の建設に関与してゆくことが謳われている。リベラル派であれ、保守派であれ、アメリカが世界の平和と繁栄に積極関与することを謳ったシンクタンクや市民団体は数多い。重要な点は、名声と影響力のある政治家が財政的制約、海外介入への心理的疲労、孤立主義を乗り切ろうとして、リーダーシップを発揮していることである。日本の国益はそうした遠大な展望を持った人達と近くあるべきである。
当然のことながら、特定のロビー経路を通じて日本の国益を促進してゆくことも重要である。この場合、日本はアメリカ国内の民族、宗教、産業、その他あらゆる部門のグループから特定の目的に合った提携相手を見出さねばならない。こうしたグループとの提携が上手くゆけば、日本の影響を前進させ、それがアメリカ国民から肯定的に受け止められるようにするために役立つだろう。例えば親イスラエル・ロビーはユダヤ人と福音派の提携である。アラブ系テロリストへの恐怖心はアメリカ国民の間でも特にユダヤ系と福音派の間で広まっている。共通の問題意識を持つユダヤ系と福音派は、強く結びついている。同様に、韓国系とアルメニア系はカリフォルニア州グレンデール市の慰安婦像の立像で強固な提携関係を結んだ。韓国系とアルメニア系は、それぞれが日本とトルコの抑圧を受けたという共通の歴史認識を持っている。日本にとって、中国の影響力に対抗するためにはインド系が提携相手になれる可能性が考えられる。インド系と中国系は高度に専門的な頭脳職をめぐって競争関係にあるからだ。しかも両者の祖国は地政学的に競合関係にある。
アメリカの政界および周辺で日本の声を最大限に反映するためには、ここで論じたことが唯一無二というわけではない。いずれにせよ、広くグローバルな視野に基づいたアプローチであれ、特定の提携関係に絞ったアプローチであれ、日本コネクションへの過剰な依存は、日本の影響力を強化はしない。アメリカの主要同盟国であるイギリスやイスラエルも様々な経路を活用し、これらの方法を組み合わせてもいる。他の国家アクターも非国家アクターもアメリカへのアプローチを進化させているので、日本もそれに応じてゆく必要がある。(おわり)
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(連載)米国に日本の声をどう反映させるか(1)
河村 洋 2013-08-12 16:21
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河村 洋 2013-08-13 14:34
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