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2013-08-27 10:29
(連載)迫る孤独な総理の決断(2)
鍋嶋 敬三
評論家
TPPは21世紀のアジア太平洋地域の国際秩序を左右する。コメや麦などセンシティブな重要品目を保護するという課題は重いが、「守り」の姿勢だけでは秩序作りに主導権を発揮することはできない。ブルネイ主催の会議でフロマン氏が議長に収まったように、主導権を握ろうとする米国の強い意志が明確である。
参加国の中に米国主導への抵抗があるのも、当然だ。しかし、参加12カ国中、最大の経済力を持つ米国と日本が協力しなければ、妥結の道は開けない。短期間に日米がともに交渉を推進する役割を果たす立場にある。幾たびもの戦禍を経て50年前に達成した独仏和解がヨーロッパ統合をもたらした。太平洋戦争の主敵同士の日米両国が同盟関係を結んだことは、それに劣らない歴史的意義がある。しかし、それはまだ未完成である。同盟関係は安全保障と経済が両輪となって初めて機能する。集団的自衛権の憲法解釈の見直し、関税の撤廃、市場開放のルール作りなど、克服すべき課題は山ほどある。
TPPや消費税引き上げ、集団的自衛権などについて、その是非を巡って様々な意見の相違がある。TPPも消費税も短期決戦である。しかし、最後に決めるのは総理大臣である。国内の強い政治的圧力に直面しながらも、広い世界的な視野に立って首相は決断しなければならない。それが首相の宿命だ。
中国の古典に曰く。「大功を成す者は、衆に謀(はか)らず」(戦国策)。大きな成功を勝ち取る者は、自分で決断を下すという意味だという(守屋洋氏)。独断専行ということではなく、十分意見を聞いたあとは、自分で決断を下す。それが指導者に課せられた責務ということであろう。「総理というのは孤独なものだ」。日本の進路を左右する決断を下した歴代首相のつぶやきが聞こえてくる。(おわり)
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(連載)迫る孤独な総理の決断(1)
鍋嶋 敬三 2013-08-26 11:16
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鍋嶋 敬三 2013-08-27 10:29
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