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2015-07-08 11:57
(連載1)イラン核交渉とプライドの問題
水口 章
敬愛大学国際学部教授
英仏米独の政治指導者にとって、7月初めは、ギリシャの国民投票(7月5日)、イラン核協議の期限(7月7日)と厳しいチキンゲームの日々となっている。ギリシャ、イランの両国からは「交渉で変に妥協すると、プライドが傷つく」といった趣旨の発言が聞こえてくる。ここで語られている国民国家という集団のプライドとは何だろうか。国家という集団に帰属意識を持つ個人のプライドなのだろうか。
国民投票に国家の将来を委ねたギリシャ政府とは異なり、イランの政策選択では最高指導者ハーメネイ師をはじめとする「イラン革命体制」維持派が強力な主導権を握っている。イランにおいては、その人々のプライドを傷つけないことが重要だといえる。イランの核問題は、今年4月の枠組み協議で、(1)ウラン濃縮活動の制限(10~15年間)、(2)核兵器開発疑惑施設への査察、(3)合意における対イラン経済制裁解除などで、妥協点を見出している。しかし、6月に入り、ハーメネイ師が、これらの妥協点の細部について独自の解釈を語り始めている。
とりわけ、最終合意の署名と同時に全制裁を解除、および軍関係施設への国際原子力機構(IAEA)の査察を拒否するという2点を強く主張している。イランはすでに、4月の枠組み合意後、凍結資金の一部を回収しており、経済的に一息ついている。また、仮に経済制裁が一括解除されたとしても、現行の原油生産量282万バーレル(6月現在)を4年前の360万バーレルに戻すには1年近くかかると見られており、この回復速度は、制裁が段階的解除となったとしてもあまり変わらないとの分析もある。
したがって、イランにとって重要なのは、プライドと関係する査察問題の方だろう。おそらく、イランはこの交渉で、IAEAが2011年に核兵器開発疑惑を指摘した報告書に関する検証を棚上げにしようとしているのだろう。そして、核の平和利用を主張し、短期間で核兵器をつくることが可能な状態に核開発を持っていくよう努めていると見られている。(つづく)
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