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2015-07-09 00:11
(連載2)イラン核交渉とプライドの問題
水口 章
敬愛大学国際学部教授
そのため、イラン側からは、核交渉がまとまれば、過激派組織イスラム国(IS)問題や中東地域の安全保障について協議ができるとの、新しい交渉条件も持ち出されている。これに呼応するように、米国やロシア側からは、過去を問題視しない選択肢を見出したいとの発言が出ている。こうした米国の対イラン政策に反発するかのように、サウジアラビアのムハンマド国防相は現在ロシアを訪問している。
また、フランスとは大型武器契約を取り交わした。そこには、サウジアラビアの政治指導者の、イランの核兵器保有に対する懸念とともに、プライドが見て取れる。そのことが、サウジに軍拡や核兵器保有を選択させる蓋然性は低くない。
イラクの故サッダーム・フセイン大統領は、1980~88年のイラン・イラク戦争、91年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争と、3度、国民を戦争に連れて行った。その折、同大統領は、アラブ人の誇り、アラブ人の名誉といった言葉をしばしば使った。こうした誇りや名誉が、フセイン政権の大量破壊兵器査察問題での妥協を阻む要因の一つとなっていたことは間違いない。
イランのハーメネイ師も、イラン革命体制を支えた革命防衛隊の誇りや名誉を傷つけるような選択肢は選ばないだろう。そうなると、国際社会は、イラク・シリアでのISに対する軍事行動でイランが協調することと引き換えに、イランの査察問題で妥協せざるを得ないだろう。このシナリオは、短期的にはISの封じ込めをもたらすものであるが、長期的にはイラン対サウジアラビア、イラン対イスラエルの対立の溝を深める結果や、中東地域での核開発競争を招く結果になる恐れがある。いずれの国においても、プライドよりも長期的な地域の安定を願う国民は少なくないのではないだろうか。(おわり)
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水口 章 2015-07-08 11:57
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