米国政治の分極化によって政治機能の不全に陥った問題についてはかつて本欄でも何回か取り上げたが、予備選挙ではそれが鮮明に映し出された。中道派の退潮である。民主党では左派のサンダース上院議員が予想外の支持の高まりでクリントン氏を追い上げた。共和党は主流派の執行部が予備選でトランプ氏と距離を置き、大統領経験者が指名党大会を欠席する異例の事態だ。高名な政治学者のW.R.ミード氏は予備選最中の5月に発表した論文で、「次期大統領は困難な責務を負う」として、国際的な挑戦は激しさを増し、国民の現状不満が増大し続けると予測、「政治的な感情が高ぶり、分極化が深まるだろう」と予言している。「米国による平和(PAX AMERICANA)に対する新たな挑戦が強まっている正にその時に、国内的危機がアメリカ社会を揺るがしているのだ」と指摘した(The American Interest)。その危機感こそ、同盟国である日本も直視すべきものである。