重要な点は、『USニューズ&ワールド・レポート』誌による2017年の国力ランキングではフランス第6位に過ぎないので、マクロン大統領が国際的なリーダーシップを発揮するにはヨーロッパとアジアで民主国家のパートナーが必要になる。ヨーロッパで最も厳しい問題は米欧関係の悪化である。JCPOAをめぐる見解の相違の他に、ヨーロッパとアメリカの間ではトランプ政権がEUを国家資本主義の中国と同様に扱うので貿易戦争が激化している。より問題になるのは、現政権下で米欧間の意思疎通が大幅に少なくなっているということだ。実際にフランスのフランソワ・ドラットル国連大使は「アメリカはトランプ政権以前にも単独行動は頻繁に行なっていたが故に、ヨーロッパ人はアメリカの孤立主義が今後も支配的になると見ている」と語っている。その結果、ヨーロッパは集団防衛による自立と外交の一体化を模索している。しかし問題はドイツの政治的安定である。メルケル氏の指導力低下ばかりか、ドイツはフランスより共同防衛に消極的で大西洋同盟志向が強い傾向はトランプ氏との個人的な関係が悪くても変わらない。 そうなってくるとブレグジット後のイギリスとの関係が、特に防衛面で重要になってくる。イギリスの国防当局はマクロン氏が提唱する欧州対外介入軍に重大な関心を寄せている。デービッド・リディントン内閣府担当相は今6月の『フランクルルター・アルゲマイネ』紙とのインタビューで「イギリスとEUは防衛面で強固な関係が必要であり、両者が完全に袂を分かてばロシアを利するだけだ」と述べた。実際にマクロン氏が提唱する有志連合に積極的な国は少ない。特にドイツがヨーロッパ圏外での海外派兵に消極的なことは、マリとシリアの例が示す通りである。よってイギリスはきわめて重要なパートナーになる。この観点からすれば、FCAS(Future Combat Air System)戦闘機計画とガリレオ衛星計画からイギリスが締め出されていることはきわめて奇妙である。イギリスの軍事産業はBAEシステムズやロールスロイスに代表されるように、数十年にわたって戦闘機、爆撃機、軍艦などアメリカの兵器システムに部品を供給してきた。EUの防衛計画にイギリスの技術は絶対的に必要で、さもなければ兵器の質や世界の武器輸出市場での競争力でアメリカ、ロシア、中国と渡り合うことは難しい。マクロン氏は英・EU防衛協力がより一貫性のあるものとなるようリーダーシップを発揮する必要がある。