第三はブレグジットがヨーロッパ諸国の共同防衛に及ぼす影響についてです。三船先生の寄稿文の通り、イギリスの政局がどうあれ域内で最強の軍事大国のEU離脱によってヨーロッパの共同防衛が弱体化することは否めません。現在のヨーロッパでは従来からのロシアとイスラム過激派に加え、一帯一路構想でこの地に進出してくる中国という三つの勢力が主要な脅威になると思われます。そうした中でアメリカのドナルド・トランプ大統領はNATO防衛に消極的かつ懐疑的な言動を繰り返しています。となるとブレグジットがあってもイギリスをヨーロッパ共同防衛体制に留めておく必要性が増すと考えられますが、現実にはEU側の対応は案件ごとに違っている模様です。例えば次世代戦闘機FCAS(Future Combat Air System)計画ではイギリスは除外され、独仏両国が中心になって開発が行なわれることになりました。他方でフランスのエマニュエル・マクロン大統領は自らが提唱する欧州共同対外介入軍にイギリスを積極的に迎え入れ、実際に他諸国とともにこの合意への署名にいたっています。そうした中で中国に対するイギリスとEUの共同防衛体制も分野によって異なってくると思われます。それは武器禁輸の他に中国からの域内投資、情報活動、サイバー戦から南シナ海での航行の自由作戦への参加まで多岐にわたると思われます。こうした各分野で、ブレグジット後も対中安全保障での英欧協力がどの分野で進み易いあるいは進み難いか、先生の見解は如何でしょうか?ヨーロッパと日本の対中安全保障について、以上3点、先生のご考察を伺えれば幸いです。よろしくお願いいたします。