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2019-06-26 16:17
(連載1)習近平政権はスターリン主義を踏襲するのか
加藤 成一
元弁護士
中国・習近平政権による内政・外政の実態をつぶさに見るにつけ、旧ソ連のスターリン主義とは多くの共通点があり、習近平氏の思想と行動は、現代のスターリン主義を連想しかねない。スターリン主義は、1924年から1953年迄ソ連の最高指導者を務めたヨシフ・スターリンの思想と行動の全体である。すなわち、(1)最高指導者に対する絶対的な「個人崇拝」、(2)「一国社会主義」のもと、マルクス主義と民族主義・愛国主義を融合させた、軍事力による「対外拡張政策」、(3)秘密警察や密告による国民の監視・逮捕・粛清・強制収容所、反革命分子摘発等の「恐怖政治」、(4)党中央機関等による徹底した「言論弾圧」と言論統制、(5)高度な科学技術情報や軍事情報等を駆使した「スパイ活動」、(6)民主集中制による最高指導者への「絶対的な権力集中」、(7)ソ連共産党の絶対的権威を背景にコミンテルン(国際共産党)を「ソ連邦防衛」のための道具としてソ連邦の利益最優先を各国共産党に義務づけたこと、などを特徴とする。
周知のとおり、習近平氏は2018年3月の全国人民代表大会で国家主席の任期を撤廃し、29年間絶対的権力を掌握し続けたスターリンと同様に、終身主席への道を開いた。以後、党規約や憲法に明記された習近平氏の政治思想(「新時代中国の特色ある社会主義思想」)は全国の学校や職場での学習が推進され、習近平氏の著作はベストセラーになり、「習主席語録」も出回るなど、建国の父毛沢東以来の「個人崇拝」が広がっているとされる(2018年7月16日「産経新聞」)。まさに、上記(1)のスターリン「個人崇拝」と同根である。
「個人崇拝」で恐ろしいことは、最高指導者が誤った判断を行い、誤った政策を断行した場合でも、事実上その批判や是正が不可能又は著しく困難であり、甚大な被害や犠牲が生じることである。かつてのスターリンの「階級闘争激化論」「スパイ罪・反革命罪・国家反逆罪」「人民の敵」概念に基づく大粛清・大量殺人や、毛沢東の「大躍進政策」や「文化大革命」の失政による甚大な被害や犠牲の発生、鄧小平の軍事弾圧により多数の犠牲者が出た「天安門事件」などがその事例である。習近平氏についても、「米中貿易戦争」への強硬な姿勢や、少数民族への残忍な人権弾圧政策、香港への強権的干渉政策、台湾武力併合の肯定、など誰も最高権力者の習近平氏に対して批判ができないとすれば、かつてのスターリン批判と同様に、将来に大きな禍根を残すことになるであろう。
上記(2)の民族主義・愛国主義による「対外拡張政策」についても、習近平政権はスターリン主義を忠実に実践するものと言える。周知のとおり、習近平氏は「中華民族の偉大な復興」を掲げ、国際法を全く無視した南シナ海での軍事基地建設、我が国が実効支配する尖閣諸島への常態化した領海侵入、「台湾併合」への野心、西太平洋への覇権拡大、さらには、アジア・アフリカの開発途上国を政治的経済的軍事的に中国の支配下におくための「一帯一路」構想など、スターリンによる北方領土軍事占領、北海道軍事占領計画、ポーランド軍事占領、ワルシャワ条約機構による東欧諸国の衛星国化などと同様に、習近平氏による対外拡張政策は枚挙に暇がない。(つづく)
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